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福島支援に入った放射線専門家の反省(2)

除染廃棄物の管理について不適切なアドバイスをしてしまった

高橋真理子 朝日新聞 科学コーディネーター

 福島原発事故の直後から、放射線防護の専門家として現地支援に入った放射線安全フォーラム理事の多田順一郎氏は、「除染に過大な期待を抱かせてしまった」ことに加え、除染廃棄物の扱いについての不適切な助言を悔やんでいる。

 環境省は、「放射性セシウムが1キロあたり8千ベクレルを超えた下水道の汚泥や焼却灰は、国が処理する指定廃棄物とする」と2011年12月に省令で決めた。逆にいえば、1キロあたり8千ベクレル以下であれば、ほかのゴミと変わらない処理をするということだ。一方、除染廃棄物については、放射能濃度にかかわらず中間貯蔵施設に運び、焼却処理などや分級(除染土壌をセシウムの吸着が多い粘土成分などとそれ以外の成分に分けること)をして放射性の強い廃棄物の体積を減らす(減容)と決めている。中間貯蔵施設はいまだ出来上がらず、除染廃棄物を入れた黒いフレコンバッグが福島県内のあちこちに積み上がっている状況だ。

拡大除染廃棄物の仮置き場=2016年3月26日、福島県楢葉町、福留庸友撮影

 多田氏が悔やむのは、除染廃棄物を『厳重に』保管するように助言したことだ。

「心の隅では、穴掘って埋めてしまってもいいだろうという思いはありましたけれど、誰かが知らないで掘り返したらまずい、という気持ちが心の反対側にあって、これまで放射性物質を『適当に捨てたりしては絶対ダメ』と言ってきた安全管理の習慣が骨の髄まで染みついていましたから、除染廃棄物をきちんと管理するように助言しました。実際に『穴を掘って埋めるべきではない』とも私は書きました。一民間人の意見が国の方針に影響したかどうか定かではありませんが、今にして思えば、そこまで強調したことは大変まずかったと思います」

「放射線管理の原理として、『集めて、閉じ込めて、二度と散らばらないようにする』というのはとっても正しい姿勢です。でも、除染廃棄物の物量や全体の状況を考え、相手がセシウムという比較的扱いやすい放射性物質であったことを考えると、そのTPOに合ったやり方を考えるべきでした」

――セシウムは扱いやすいのですか?

「セシウム137とセシウム134は、ガンマ線を測るだけでおよそどのくらいの量があるか見当がつきます。セシウムのガンマ線は普通の放射線測定器(サーベイメーター)で簡単に検出することができますし、水や土壌に含まれる放射性セシウムの濃度を測定するのも比較的容易です。そこがガンマ線を目印にできないプルトニウムやストロンチウムと決定的に違う点です。さらに、日本の火山岩質の土の中では、セシウムは雲母を含む粘土の微粒子に捕獲されて大きく移動できないので、地下水に混じることはまずあり得ません。埋めても拡散しないし、たとえ漏れても簡単にそれを検出できます。その点、有害化学物質や重金属の漏洩が長期間気付かれずに放置されたこともある一般産廃処分場より、安全を確保しやすいといえます。簡単に掘り返されるようなところを避けて埋め、50センチなり1メートルなりの覆土をしたら、地表に漏れてくるガンマ線はほとんどありませんので、安全に保管できるでしょう」

 県内の除染廃棄物をすべて中間貯蔵施設に保管するという方針は、2011年8月に佐藤雄平福島県知事(当時)に会った菅直人総理(当時)が言い出したことだ。このとき、 ・・・続きを読む
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筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) 朝日新聞 科学コーディネーター

朝日新聞 科学コーディネーター。1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)などを務める。著書に『重力波 発見!』『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

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