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学術会議が全国縦断サイエンスカフェを開始!

科学者と市民がともに学ぶ場を日本全国に根付かせたい

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 サイエンスカフェとは、広い意味での科学の話題をとりあげて、まず科学者が基礎的説明をした後、一般の参加者とともに、互いに異なる視線でありながら対等な立場で双方向の議論を行い、それぞれの理解を深めることを目的とした企画である。「カフェ」という名前からもわかるように、一般の講演会とは違い、参加者の顔がお互いに見渡せる程度の小人数で、何か飲みながらリラックスした雰囲気を語り合うのが特徴である。

 イギリスやフランスから始まったサイエンスカフェを日本に普及させる上で、日本学術会議が主催した定期的なサイエンスカフェは大きな役割を果たしてきた。一方、それらが大都市圏に偏った活動だったのもまた事実である。そこで学術会議は今年度から全国縦断サイエンスカフェに取り組むことにした。日本全国で展開したいと思っているので、協力していただける自治体や学校関係者はぜひ学術会議会員あるいは連携会員を通じて学術会議科学力増進委員会まで申請頂きたい。

 図1は、JST(科学技術振興機構)の科学技術の最新情報を提供する総合WEサイトから、2015年1月から2016年2月に開催されたサイエンスカフェを都道府県別にまとめたものだ。元データを表1に示した。これからわかるように、サイエンスカフェは圧倒的に大都市圏に集中している。2006年以降現在までに、学術会議が関係したサイエンスカフェだけに限っても、やはり異常なほどの東京一極集中が見えてくる(図2)。

図1 2015年1月から2016年2月に開催されたサイエンスカフェの都道府県別実施回数 (表1のデータをもとに日本学術会議事務局作成)
図2 2006年以降現在までに、日本学術会議が関係したサイエンスカフェの都道府県別実施回数(日本学術会議のホームページのデータを元に日本学術会議事務局が作成)

表1 図1の元データ。
http://scienceportal.jst.go.jp/events/201602.html
 その理由は明らかだ。研究機関や大学が東京を始めとする大都市圏に集中している。学術会議もまた乃木坂に建物をもち、210名の会員、約2000人の連携会員のかなりの割合は大都市圏に住んでいる。学術会議が隔月で開催している定例サイエンスカフェも、霞が関にある文部省のラウンジで行われている。

 この状況を見るにつけ、高知県出身の私には、すでに数え切れないほどの講演会やサイエンスカフェが開催されるようになった大都市圏ではなく、そのような機会が極端に少ない地方に普及させることこそが、学術会議の次なる役目だと思えてならない。

 といっても、その実現には多くの方々の協力が不可欠である。そもそも日本学術会議は、(名前こそ立派に聞こえるが)実際には予算が極めて限られており、毎年のように、会議参加者の旅費や会議費の不足が問題となっている。サイエンスカフェを地方で開催しようにも、そのための予算は実質的には0なのである。

 そこで、私が学術会議会員、および連携会員の方々にお願いしているのが、他の用務等で全国各地に出張する際に、自治体や大学、研究機関、中学・高校など、サイエンスカフェを共催して実施していただける団体を探して頂く可能性である。実はそのような企画に興味があるにもかかわらず、お互いの情報のミスマッチのために、実現に至っていないという場合は決して少なくないようだ。

 2013年9月21日に一度だけ、学術会議と高知市がサイエンスカフェを共催して実施した例がある。この際は、

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