「オバマ」後の核戦略をめぐるドイツ国際会議で示された視点
2016年06月29日
6月17~19日、20~22日と、ドイツ国際問題・安全保障研究所(SWP)が主催する二つの国際ワークショップに参加してきた。前半が「核軍縮の再生にむけて」、後半が「アジアの安全保障と核の安定」というテーマで、ドイツ・欧州を中心に、米国、ロシア、中国、インド、パキスタンといった核保有国から、また韓国、日本、オーストラリアといった非核保有国で核の傘に依存する国から、それぞれ40名ほどが参加。チャタムハウス・ルール(会議の内容は公開してもよいが個人の発言は引用不可)で行われた。以下は、両会議での議論からの重要な視点である。
この原稿を書き始めたところ、ちょうど英国EU離脱の国民投票結果が報じられ、一方で北朝鮮のミサイル実験成功に伴う各国の懸念も報じられていた。まさに、国際情勢は一寸先が闇、という時代に突入した、ということを実感させられる。
本会議の冒頭で「第3の核の時代」という言葉が紹介された。第1が冷戦時代、第2が冷戦後とテロの台頭、第3が現在で、地域核の脅威と冷戦思考の復活、という説明であった。地域核には、核テロを含むとされ、まさに「核の脅威」が多様な形で表面化してきている、ということであり、国際社会は核の脅威にこれまで以上にさらされている、という危機感が会議の参加者に共通していた。
もう一点、世界の政治経済、そして核・原子力の重点がともにアジアに移っている、という指摘も重要だ。ここでいうアジアには中東までを含むとされ、原子力発電の伸びも、核の脅威も、中東、南アジア、北東アジアが今後の焦点になる、という見方だ。欧州もウクライナ・ロシア問題から再び「冷戦思考」が復活しており、核抑止による安全保障が再び重視され始めた。ロシアの核は欧州にとって再び現実の脅威とみられているのだ。
核の脅威が増しているために、再び「冷戦思考」が台頭し、核軍縮に大きな障害となっている…これが参加者の共有する危機意識であった。オバマ大統領の広島訪問とその演説は、残念ながら
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