むしろEUの科学研究費配分方法の弊害が是正される機会かも知れない
2016年07月11日
英国の国民投票がEU離脱を選択した結果は6月24日金曜朝の欧州を大きく揺さぶり、経済の先行き不安から株価が大きく下がった。しかし週末をはさんだだけで月曜からはかなり平静を取り戻している。しかもEU側の英国への対応では、英国の脱退を恐れない強硬姿勢が目立つ。「から元気」という見方もできようが、個人的には、英国がEUの規則に口を出さないメリットをEU側が感じているためだろうと思う。
EUという巨大機構は各国の国家主権を少しずつ侵食しており、そこに英国民が譲歩の限界を感じたのは確かだろう。だが、独仏を始めとするEU主流派もヘッジファンド規制など多くルールで英国に譲歩しており、譲歩の限界を感じている。英国がEUの足並み乱してきたという感覚は、大陸側に確かにあるのだ。当然、英国がEUから出て行くなら、今までの譲歩もなかったことしたい。それがメルケル独首相の「良いとこ取りは認めない」という発言の根底にある。
さて、英国のEU離脱に関して経済やEUの求心力への影響ばかりが語られるが、他の分野への影響は余り語られていない。そこで、本稿では科学分野に関して私見を述べたい。
ニュースを検索すると、英国の科学研究へのダメージを憂う記事が目に付く。主な不安は科学研究予算への影響と、EU予算の枠組みの共同研究からはじき出される恐れ、移動の制限に伴う若手研究者の身分保障への懸念だ。
これらの不安は国民投票前からもあり、ネイチャー誌のアンケートによると国民投票に行くと答えた666人の研究者のうち、離脱が英国の科学に大きくダメージを与えると考える人が半数にものぼった。多少のダメージと答えた人を含めると8割近い。英国地質調査所による地球科学者へのアンケートでも、758人の実質回答者の半数が大きなダメージを予想し、多少のダメージと答えた人を含めると77%にのぼる。
これらのニュースの見出しだけをみると、あたかも研究一般へのダメージがあるような印象を受ける。しかし、
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