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一票の格差か、面積当たりの格差か

日本列島の光の分布から見えてくること、気をつけるべきこと

須藤靖  東京大学教授(宇宙物理学)

 毎日暑い日が続く。少しでも涼しい気分を味わえるよう、夜の地球の画像を紹介してみよう。これは、スオミNPPと呼ばれる米国の気象衛星が、2012年4月の9日間および10月の13日間に撮影したデータをもとに作成された画像だ。全地球データから、特に日本列島近辺を切り抜いたので、じっくりご覧頂きたい。

拡大日本周辺の夜の光の分布図(2012年4月の9日間および10月の13日間に撮影したデータをもとに作成)
出典 NASA Earth Observatory

 この夜の光分布地図はじっくりと見れば見るほど、様々なことを考えさせてくれる。私の頭にすぐ浮かんだのは、一票の格差だ。7月10日の参議院選挙から、鳥取・島根および高知・徳島がそれぞれ合区となった。我がふるさと高知県では、立候補者3名がいずれも徳島県出身であったため、選挙戦は盛り上がりにかけたようだ。実際、総務省の調べでは、高知県の投票率は全国最低の45.52%、それに続くワースト2位が徳島県の46.98%だったという。県出身者が立候補した徳島県でも、合区となったことで関心が下がってしまったのだろうか。

 今回の合区の設定は、ずっと問題とされてきた一票の格差の解消策の一つである。憲法における法の下の平等、国会議員の役割、さらには参議院制度の意味など、法律論として考えれば、これが合理的な解(の一つ)なのであろう。それに対して反論をするつもりは毛頭ない。確かに、この光の分布図を眺める限り、高知と徳島をまとめてしまおうという判断もあながちおかしいとは言えまい。

 光り輝くものをしつこく調べることでこの世の真実を明らかにしようとするのが、天文学の目的(の一つ)である。その重要な成果として、現在の宇宙の質量の約95%は全く光を発しない暗黒成分(ダークマターとダークエネルギー)からなっていることがわかってきた。宇宙の輝く成分だけを観測し続けた結果、それらは質量に占める割合でいえばわずか5%の少数派に過ぎないことが明らかになったのである。このようにいかなる側面に着目するかによって、主役と脇役は全く逆転しうる。

 そもそも天文学では、明るく光っているものだけに目を奪われてしまうと、とんでもない間違いをおかす可能性がよく知られている。これは「選択効果」と呼ばれ、天文学の講義や研究の現場では、その重要性がしつこく叩き込まれる。 先ほどの夜の光分布地図もその観点に立って気をつけて見直すと、異なる風景がひらけてくる。

 日本だけに限ると、この光の分布は ・・・ログインして読む
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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし)  東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。第22期・第23期日本学術会議会員。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に『ものの大きさ』、『解析力学・量子論』、『人生一般二相対論』(いずれも東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『三日月とクロワッサン』、『主役はダーク』『宇宙人の見る地球』(いずれも毎日新聞社)などがある。

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