「脱炭素の時代」へ急転換する世界のビジネス
2016年07月21日
昨年末のCOP21で成立した「パリ協定」では、今世紀後半に温室効果ガスの「実質排出ゼロ」をめざすことが国際的な合意となった。この目標を実現する鍵になるのが、自然エネルギーの拡大であることにはついては、すでに何回か、このWEBRONZAに書いた。例えば、「気候変動対策の主役に躍り出た自然エネルギー」
自然エネルギーでエネルギー利用全体の脱炭素化を進めるためには、まず電力の100%を自然エネルギーで供給できるようにすることが、必須の課題となる。今年の春から、世界レベルでこれを成し遂げようという壮大な構想が動きだした。
それは、「グローバル・エネルギー・インターコネクション(GEI)」と呼ばれる構想であり、世界各地の自然エネルギー資源の最大限の活用のために、現在は分断されている世界の送電網を連結しようというものである。自然エネルギー財団は2011年の設立以来、モンゴルの風力や太陽光資源など、アジア各地の豊富な自然エネルギー資源を相互に活用しあう「アジア・スーパー・グリッド(ASG)」構想を提唱してきたが、いわばGEIは、ASG構想の世界版である。
国際送電網の実現は、自然エネルギー100%にどのような意義を持つのだろうか。電力供給に占める自然エネルギーの割合を増やしていこうとするときに、その障害になると指摘されるのは、日照や風況など気象の状況によって発電量が変わる自然エネルギーの変動性である。
電力を安定的に供給するためには、需要量と供給量は常に同一でなければならい。太陽光発電や風力発電などの変動型自然エネルギーを、電力系統の中で安定的に使用するための方法はいくつもあるが、その一つは電力系統の広域化である。
太陽光発電と風力発電の発電量を左右する気象の変動の大きさは、広域的に見れば平準化する。日本国内だけを見ても、関東がくもりでも関西が晴れていることは珍しくないし、関東や中部、関西で風が吹いていなくても東北や北海道では風が強い、というようなことはよくある。
太陽光発電や風力発電の発電量を広域的に集計すれば、その変動が大きく緩和されることは、幾多のデータで実証されている。こうした緩和効果は、系統の広域化を国を超えて進めていけば、更に大きくなる。
広域化は供給量だけでなく、電力需要の平準化にも効果がある。時間帯の異なる国と国を結べば、電力のピーク時間帯がずれることにもなるからだ。
日本では東日本大震災以降、ようやく電力制度改革が動き出した。その一環として、北海道から九州まで、九つの電力会社が自社域内だけで需給バランスをとることを大前提に行ってきた従来の系統運用を、より広域化する試みが進められている。
送電網自体は、物理的には電力会社を超えて接続されてはいるが、自然エネルギーの大幅な導入を可能にするために広域送電網を活用する、というような積極的な一体運用は、行われてこなかった。日本では、国際連系どころか国内での広域運用すら、まだこれから本格化する段階なのだ。
しかし、海外の状況を見てみると、電力系統が国を超えるというのはごく当たり前になっている。実際、世界の主要国の中で、電力系統が全く海外とつながっていない、というのは日本と
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