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トルコが科学から遠ざかる

宇宙空間科学最大の国際会議がキャンセルに至った経緯

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 7月15日のトルコ・クーデター未遂事件を受けて、7月31日からイスタンブールで開催される予定だったCOSPAR大会がキャンセルとなった。これは宇宙空間から太陽系全般・電離層研究に至る幅広い分野をカバーする「スペース科学」分野では最大規模(参加者数千人)の国際会議で、41回目を迎えるはずだった。私の研究分野(スペース科学と地球科学)の会議で安全保障を理由にキャンセルになったのは今回が初めてだ。非常に残念なことである。

キャンセルされた第41回COSPAR大会のホームページ

 COSPAR(スペース科学会議=Committee on Space Research)は、国連主導の国際科学会議(ICSU)の下部組織である。人類初の人工衛星スプートニク打ち上げ翌年の1958年に設立され、その大会は1980年まで毎年、その後も2年に一度開かれ続けている。スペース科学に関する国際的なルールを政治的中立性を保ちつつ決める実体であり、例えば月や惑星の所有権を認めない取り決め(南極条約の宇宙版)、生物の存在する可能性のある天体(火星やタイタン・エウロパなどの衛星)に地球起源の生命体がはいり込まないようにすべく惑星探査機の打ち上げ前に機体から微生物を排除したり軌道を調整したりする取り決め(惑星保護条項:例えばガリレオ木星探査機が木星突入して燃え尽きたのもこれが理由)などを作ってきた。

 設立当初は冷戦で東西陣営がお互いの最新技術を競っていた時期であり、その象徴でもある宇宙開発の分野で、科学という窓口から東西陣営の交流を維持した貴重なチャンネルだった。宇宙に国境がないからこそ、そして人工衛星の軌道の関係から宇宙に国境を作ることが原理的に不可能であるからこそ、宇宙は共同利用せざるを得ず、それがCOSPARをいち早く成立させた。

 大会の開催地は人工衛星を使った各種探査に従事している国々がほとんどで、人工衛星を自力で打ち上げられる国(「宇宙クラブ」と呼ぶ)や、人工衛星を積極的に利用している国のうち、国際的に認知されている国が優先される。日本でも1968年(東京)と1998年(名古屋)に開催されている。一方、過去にイスラム圏でCOSPAR大会が開かれたことはない。

 イスラム圏の宇宙クラブメンバーはイランだけである(WEBRONZA2015年7月31日「イラン核合意の宇宙技術の視点から見た大きな意義」)。そのイランは昨年までの米国との対立から国連傘下の国際会議を誘致できる状況になかった。しかしイスラム圏で宇宙開発の機運が高まっているのは事実だ。小国のドバイですら、他国の助力があるとはいえ、火星を目指している時代なのだ。

 そこで、イスラム圏初のCOSPAR大会開催地として選ばれたのがトルコのイスタンブールである。トルコは

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