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医療用大麻をどう考えるべきか

米国は州レベルで合法化が進むが、日本が後追いする必要はない

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

「医療大麻の研究推進」を含む公約を発表する新党改革の荒井広幸代表=2016年6月14日、飯塚晋一撮影
 今年の参議院議員選挙で、「医療用大麻」という耳慣れない言葉が公約の中にあった。新党改革(当選者が出なかったため、参議院選挙後に解党)が、脱原発とともに医療用大麻の研究推進を掲げたのだ。大麻の使用は、日本では目的にかかわらず禁止されている。それを理不尽と言えるのだろうか。

 大麻は植物で、乾燥させた加工品をマリファナと呼ぶ。国連の麻薬に関する単一条約(1961年)で、ヘロインやコカインと並んで規制対象とされ、多くの国で禁止薬物に指定されている。オランダでは1970年代から個人の使用が認められてきたが、これは正確には「合法化」ではなく、「非犯罪化」だという。

 1996年に米国カリフォルニア州が医療用に大麻を使用することを認めた。その後、米国では医療用大麻を合法化する州が相次ぎ、嗜好用まで使用を認める州も出てきた。しかし、連邦政府は大麻を禁止しており、医師も患者も罰せられることになっている。2014年にニューヨーク・タイムズ紙が「大麻を禁じる連邦法を撤廃し、州の判断に委ねるべきだ」という社説を掲載したのは、米国の空気を象徴した出来事だった。

 米国では、12歳以上の人で一度でも大麻を経験したことのある人は40%を超す。コロラド州が嗜好用大麻を解禁したのは、住民投票の結果を受けてのことで、経験率がこれだけ高ければ「マリファナぐらいで逮捕されるのはおかしい」という意見が多数派になるのも不思議ではない。

 マリファナは体に悪くないのかというのは、誰しも気になるところだろう。よく言われるのは、タバコ(ニコチン)やアルコールに比べれば害は少ないということだ。しかし、今やタバコもアルコールも大きな健康被害をもたらすものとして世界保健機関(WHO)が消費量の削減に躍起になっている。それらより害が少ないとしても、だから吸って構わないということにはなるまい。

 では、逆に医療上の効果があるのだろうか。

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