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風車230基の計画!~地元参加と透明性を

北海道北部、大型風力計画への期待と課題

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

 日本のエネルギー基本計画によれば、再生可能エネルギーは、2030年に電力構成比で24%を目ざし、原発20%を超える。その再生可能エネルギーの柱は、現実には水力と太陽光であり、コストの安いはずの風力は日本では1%にも満たない。その風力発電の大規模な建設が北海道北部で進められている。

計80万キロワット、強大な風車建設計画

北海道・稚内にある風車。風況がよく発電の効率が高い。
 ユーラスエネジー系の道北エナジーが230基の大型風車(1基3メガW以上)約80万kWを2022年までに2400億円をかけて建設する計画である。

 この計画は、①その巨大性と同時に、②送電線の建設と所有(特別目的会社設立、国の予算で500億円の半額を支出)、③風力による電力を「北本」連系線で本州に送電する、④環境アセスメント手続きの短縮の要請に対応している、などの特徴がある。

 事業主体のユーラスエネジーは、すでに日本最北端の宗谷岬に57基の風車群を持ち、10年以上の操業実績があり、稚内市の電力の実質7割を賄っている。

 合計80万kWにも及ぶ大型風車が建設されることは、3つの意義があると考える。

 ① 北海道内の再生可能エネルギーのポテンシャルを活かす計画である。北海道、とくに道北は風力発電エリア別賦存量、導入ポテンシャル共に全国トップであることを示す。

 ② 風力発電を北海道内で使えば、天然ガス火力発電(石狩湾)の操業も始まるので、北海道電力の泊原発(3号機、100万kW)の再稼働は不要であることを示す。

 ③ 風車の建設・維持・管理による雇用と税収による地域経済の波及効果が期待される。

地元への説明、利益の還元

道北エナジーによる風力発電計画。丸印が建設計画地点。サロベツ・エコ・ネットワーク提供。
 以上のような積極的な意義にも関わらず、大型風車建設は、その巨大性のゆえに、多くの課題と問題点を抱えている。北海道の環境NGOが日本野鳥の会と共催で行ったシンポジウム「風は誰のもの」(2015年7月)と「大型風車の建設ラッシュを考える」(2016年8月)では、以下のような課題と問題点が具体的に指摘された。

 ① 多くの風車建設(600-1000基)による開発、とくに多数の風車群林立による累積的影響が未知であり、この点は行政側(北海道庁)によっても「類例のない集中立地となる可能性」と指摘されている(地図参照)。

 ② 風車建設予定地は、国立公園に隣接した地域であり、利尻富士など景観、眺望変化が大きい。

 ③ 600-1000基に及ぶ大型風車の立地による騒音問題など住民への健康影響も懸念される。

 ④ 宗谷岬は、日本のかなでも野生生物、野鳥、渡り鳥の豊富な生息地であり、幾筋にもわたり、北に延びる風車群が立てば、環境影響は大きい。

 ⑤ 現在の環境影響評価制度は、何度か改定されてきたが、基本的な問題点として、ゾーニングやSEA(戦略的環境アセスメント)がなく、最終的には事業者まかせの制度となっている(計画の一覧表を示す)。

  以上のような問題点について、先のシンポジウムでは、さらに次のような指摘があった。もともと、宗谷地方は森林に覆われていたが、戦後は酪農開拓のために大規模伐採が行われ、一見「緑地」のように見えるところも、自然とかけ離れた人工造成地となっている。そこに、さらに外部から開発によって大型風車が林立するという景観になる。

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