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月の商業利用の可能性を考える

Moon Express社が宣言した「月資源調達」構想は実現するか

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

拡大Moon Express社の代表のロバート・リチャード氏。左にいるのは、NASAマーシャル宇宙センターのプロジェクトマネージャーのグレッグ・シェイバー氏=ケネティ宇宙センターで、Ben Smegelsk氏撮影、NASA提供
 米国連邦航空局がMoon Express社の月探査機打ち上げを今夏認可した。この会社は月固有の資源を地球に持ち帰って採算を取ることを目標に掲げており、米国政府機関による打ち上げ認可はその一里塚だ。もっとも、「国際法上可能なのか」「採算は取れるのか」など疑問も多い。本稿では月の「商業利用」の可能性を考察したい。

 かつて月や惑星は、到達することすら民間企業に手に余った。一方、アポロ計画の成功以降、月着陸は国家事業として取り組むには技術的にも科学的にも物足りないと考えられてきた。中国が37年ぶりに着陸を果たした(本欄『37年ぶりの月面着陸を祝う:人類の夢実現への「第3歩」だ』参照)ものの、世界的に見れば月着陸の技術開発は停滞した。

 この流れを変えたのが、国際コンテスト「グーグル・ルーナー・Xプライズ」だ。これは、世界初の民間月ミッションをプロモートする賞金コンテストで、月に無人地上探査機(ローバー)を着陸させ、500m動かして、その画像と動画を高画質で地上に送信させれば、一番乗りの民間チームに約20億円もの賞金が出る。この金額は、開発次第では、製作・打ち上げ費用を十分に賄うはずだ。

Xプライズによる民間宇宙企業の台頭

 この月探査コンテストは「Xプライズ」シリーズの一つである。

 Xプライズは、採算の取れそうにない技術的挑戦を、政府の代わりに民間ベンチャー組織に競争形式で行なってもらう賞金コンテストで、第1回の「民間宇宙旅行」は20年前に公募された。再使用可能な機体を使って高度100kmに到達させる内容で、まだ宇宙=国家事業と思われていた時代だっただけに、初成功まで8年かかった。しかし、その結果、個人宇宙旅行向けのバージン・ギャラクティック社が設立されて、コンテストの目的は完全に果たされている。

拡大日本から月探査コンテストに参加している「ハクト」チームは鳥取県と連携協定を結んだ。締結式での袴田武史ハクトチーム代表(左)と平井知事=2016年5月18日、鳥取県知事公邸、柳川迅撮影

 次の宇宙ターゲットが月探査で、2006年に公募され、翌年に公募対象が全世界に広がり、34の民間チームが参加した。現在16チームが来年末の締め切りを目指して開発を続けている。上記Moon Express社は特に積極的で、いち早く打ち上げ契約を結んだほか、法律・制度上の支援を米国政府に働きかけている。その際、「商業利用」の目標を発言している。 

 民間宇宙旅行が商売となった現実を踏まえると、目標自体は開発チームとして自然なものだし、それに対して外交辞令のように期待を述べる政治家がいてもおかしくない。しかし、月の商業利用が本当に可能かどうかは別の話だ。ハードルは二つ、 ・・・ログインして読む
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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

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