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超人スポーツをご当地スポーツへ

地域らしさを表現する新スポーツを創った岩手県の取り組みを全国に広げたい

稲見昌彦 東京大学先端科学技術研究センター教授

 リオデジャネイロ・パラリンピックでドイツのマルクス・レーム選手が走り幅跳びで8m21cmという記録で優勝した。レーム選手は昨年の世界選手権ではロンドン五輪の金メダリストを超える記録を出しており、2020年の東京では、パラリンピックの各種種目の記録がオリンピックを超えることも視野に入りつつある。一方レーム選手をはじめとするパラリンピック記録の躍進は、高性能の義足などの補綴用具による「技術ドーピング」のためとも言われ、レーム選手が強く参加を希望したリオ五輪への出場は断念せざるを得なかった。

 選手を支援する技術のあり方についてはさまざまな意見があるだろうが、筆者らは、むしろテクノロジーを積極的に用いることで能力を拡張し、新しいスポーツを作り出したいと考えている。このWEBRONZAの場で2013年秋に「2020年にサイボーグ五輪を開催しよう」と提唱したように、身体や用具の限界、フィールドの制約を越えることを目指した「人機一体」の新スポーツの創出である。その後2014年10月に有識者団体「超人スポーツ委員会」(現在は超人スポーツアカデミー)を、2015年6月に競技開発・運営組織として「超人スポーツ協会」を共同代表の一人として設立し、以来シンポジウムやハッカソン、体験会を開催し、現在まで「バブルジャンパー」、「キャリーオット」、「ホバークロス」、「HADO」などの認定競技が生まれつつある。

拡大バブルジャンパー
拡大ホバークロス

 そして、9月24日(土)・25(日) に盛岡市内で『岩手発・超人スポーツプロジェクト』最終成果発表会・体験会が開催されることになった。なぜ、岩手で超人スポーツなのだろうか。実は岩手県は『2016希望郷いわて国体・希望郷いわて大会』をホストしている。それを機に、岩手全体で展開するスポーツの枠を越えた取り組み「国体・大会プラス」として今まで我々が開発した超人スポーツの体験会を行うことを当初は検討していた。しかし企画に関し議論を重ねる中で違和感を覚え始めた。

 超人スポーツとは、新たなスポーツを創造する取り組みであるとともに、アニメや漫画、ロボットやサイボーグなど、日本が得意としているポップカルチャーや技術の土壌から生まれた現代の日本を体現したスポーツともいえる。それならば、岩手のご当地スポーツを国体に合わせ地域の方々とともに開発したいと考えたのである。

 例えば、今や世界各国で人気の寿司やラーメンなどの料理も、国内に目を向けると地域ごとにバリエーションあふれるご当地グルメがある。そして、「B1グランプリ」のように気楽に食べられる新たなご当地グルメを競うイベントも好評を博している。また、国技とされる相撲をはじめとして、だんじりや福男選びなど身体能力を活かした神事も全国各地にあり、名物となっている。だったら、岩手のご当地グルメならぬご当地スポーツがあってもいいではないか。

拡大キックオフシンポジウムの様子

 プロジェクトは4月24日に達増知事らを迎えて開催したキックオフシンポジウムを皮切りに、5,6,8月に岩手県内の社会人、大学生、高専生、専門学校生らとともにゲーム監督/eスポーツプロデューサーの犬飼博士氏、ニコニコ学会β実行委員長/メディアアーティスト江渡浩一郎氏、超人スポーツ協会事務局長/慶應義塾大学大学院准教授南澤孝太氏らをファシリテータとし、スポーツクリエーションワークショップを開催した。

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筆者

稲見昌彦

稲見昌彦(いなみ・まさひこ) 東京大学先端科学技術研究センター教授

1972年東京生まれ。99年東京大学大学院工学系研究科修了博士(工学)。マサチューセッツ工科大学客員科学者、電気通信大学教授、慶応大学教授などを経て現職。強化人間、自在化技術、エンタテインメント工学に興味を持つ。光学迷彩、動体視力増強装置など、空想と科学を繋ぐ技術を多数開発。【2017年9月WEBRONZA退任】

 

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