海外で活躍できるリーダーになろう
2016年10月04日
拙稿「日本の大学の世界ランクはなぜ落ちる一方なのか」で引用した、英国タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education: THE)の世界の大学ランキングの最新版が、9月21日に発表されたが、東京大学が43位から39位へとわずかにランクを戻したものの、日本の大学のランキングの全般的な向上は、残念ながら見られない。その主たる原因は、日本の大学のグローバル化の遅れである。
研究者の視点から見ると、残念ながら、以前に比べて、海外での日本の研究者や学生の活躍が少なくなっており、せっかく日本の中で優れた研究が行われていても、それが海外から見えにくくなっている。海外から日本が、アニメ、ゲームソフト、食品だけでなく、科学技術やビジネスの現場として良く見えていないと、結局、遊び半分のような人ばかりが日本に来て、世界のトップレベルの環境で働きたいと思っているような一流の人は日本に来ず、我が国の発展の役に立たない。
AI(人工知能)の分野では、Amazon、Facebook、Google、IBM、Microsoftなどが、莫大な投資をして、種々の自社サービスを対象とした開発していることは良く知られているが、これらの多くが、最近、他の企業を対象としたAIのクラウドサービスを始めている。AIの技術は今後ますます複雑化し、個々の企業で技術開発をしたのでは莫大な投資に耐えられなくなるので、このクラウドサービスのニーズは必ず大きくなる。
これらの企業は、AIの技術開発スタートアップを吸収し、どんどん大きくなる。アメリカでは、大学でも、AIを含む計算機科学の教員を急速に増やし、学生数も急速に増やしている。日本がこれらの圧倒的な流れに取り残されず、存在感を示していくにはどうしたらよいか、その対策が急務になっている。
日本から、アメリカを中心とするこのような流れを、指をくわえて見ていたのでは、格差が広がるだけである。グローバルな流れに食いつき、参加し、リードできるようになるためにはどうしたらよいか? このためには、日本の有能な人材が、海外での流れに参加し、貢献し、この分野のリーダーの一員になることが不可欠だ。
拙稿「AI研究に立ちはだかる壁」に書いたように、一言で「AI」と言っても、急速な進歩が見込める分野と、まだ道筋が見えていない分野がある。いわゆる「シンギュラリティー」も、その定義は必ずしも明確でなく、人間のすべての知的な活動が、いっぺんにAIにとって代わられる時代が来ることはあり得ない。まだまだ、越えなければならない壁は山のようにある。
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