ノーベル賞大隅さんの懸念を裏付けるデータ
20年後に日本人のノーベル賞受賞者はいなくなる?
高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター
会見する大隅良典さん=10月3日夜、東京都目黒区の東工大、西畑志朗撮影
大隅良典さんは、ノーベル医学生理学賞受賞の知らせを受けたあと、現在の日本の研究環境を憂えるコメントを繰り返し述べた。このところ相次いでいるノーベル賞受賞者がその研究業績を挙げたのは20年前、30年前のことであり、昨今の応用重視の科学研究行政の元では20年先、30年先のノーベル賞受賞は見込めない、というのだ。「日本の科学は空洞化するという危機感を非常に強く持っています」とも語った。
この大隅さんの懸念を裏付けるデータが、9月に発表された文部科学省科学技術・学術政策研究所のサイエンスマップ2014の中にあった。これは科学研究の現状を把握するため世界中の論文を分析した報告書で、第1回のサイエンスマップ2002から数えて7回目になる。ノーベル賞ラッシュという華やかな出来事の裏で、確かに日本の科学は空洞化が進んでいる。それが文科省の研究報告書に表れていた。
今年のノーベル賞のプレスリリースの中で大隅さんの重要論文として挙げられているのは4本。1992年、93年、98年、2000年に発表されたものだ。大隅さんは東大教養学部基礎科学科を卒業し、京大や米国ロックフェラー大学で研究生活を送ったあと、東大理学部植物学教室の助手となり89年に「ふるさと」である駒場の東大教養学部に戻って助教授となった。96年には愛知県岡崎市の基礎生物学研究所に教授として転出、東京工業大学に移るのは2009年である。重要論文は、東大教養学部と基礎生物学研究所時代に生み出されたことがわかる。
90年代は、日本の科学技術行政が変革を始めた時期である。科学技術基本法が95年に施行され、科学技術基本計画が5年ごとに策定されるようになった。その効果で文科省の科学研究費(科研費)は最初の10年間着実に増額された(下図)。基本法の成立は、政府の科学技術政策の方針が明文化されるようになったという点でも歓迎すべきことだった。
日本学術振興会のホームページから
しかし、2000年以降は主に大学改革の負の影響があらわになってくる。行財政改革の流れから国立大学を法人化するという議論が始まり、2004年4月に国立大学は国立大学法人となった。それと同時に国立大学の運営のために配分されていた運営費交付金は毎年削減され、代わりに競争的な資金が増えた。競争的とは、大学や研究者が計画を提案し、競合する多くの提案の中から文科省なりの資金配分団体が配分先を選ぶという仕組みを指す。
それによって
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