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「激安」自然エネルギーが可能にするパリ協定

太陽光発電の世界最安値は2.5円/㌔ワット時

大野輝之 公益財団法人自然エネルギー財団常務理事

 昨年12月、パリ協定成立の直前にWEBRONZAに掲載された私のコラムでは、安くなった自然エネルギー発電が気候変動対策のハードルを下げ、国際合意づくりを助けている、と書いた。その中で紹介した太陽光発電の最安値は、チリで昨年10月に行われた発電事業入札での6.5㌣(約6.7円)/kWhというものだった。

 協定成立から1年もたたず、脱炭素社会への転換をめざす画期的な国際協定が発効した。世界はいよいよ化石燃料の離脱に本格的に取り組まなくてはならないが、その強い味方はますます安くなっていく自然エネルギーだ。太陽光発電の世界最安値は、なんと1kWh=2.42㌣(約2.5円)まで下がっている。

どんどん安くなる太陽光発電

 

自然エネルギー財団は今年9月、設立5周年シンポジウムを開いた自然エネルギー財団は今年9月、設立5周年シンポジウムを開いた
今年9月9日、自然エネルギー財団は、設立5周年シンポジウム「世界中の電力網に自然エネルギーをつなぐ」を開催した。その中で行われたブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス創設者、マイケル・リーブレック氏のプレゼンテーションは、世界中で自然エネルギーコスト低下が進んでいる様子をリアルに紹介して、参加者に強いインパクトを与えた。(プレゼンの動画と資料はこちら

 リーブレック氏のプレゼンで紹介された自然エネルギーの最安値は、風力発電では今年の1月にモロッコで行われた入札での1kWhあたり3.0㌣というものだ。石炭火力と比べても半分程度の水準になるから、驚くべき安さである。

 それでは太陽光発電はどうか。リーブレック氏は今年2月にペルーで4.8㌣がという入札が行われて以来、3月のメキシコ、5月のドバイとどんどん安くなり、8月にチリで2.91㌣という最安値を記録したことを紹介している。これが9月9日のシンポジウム当日の世界最安記録だった。だが、9月20日のブルームバーグニュースは、アブダビの入札では、更に記録が更新され、冒頭に紹介したように2.42㌣という新記録を達成したことを報じている。

太陽光発電コストは、2025年までに57%下落

 もっともここで紹介した風力発電、太陽光発電の最安記録は、いま直ちに世界のどこでも実現するものではない。モロッコの最安記録は、85万kWの大規模風力発電所プロジェクトに対する入札の結果であり、風況にめぐまれファイナンスの条件も良いケースで実現したものだ。

 

図1 2025年までの太陽光発電の導入コスト予測(IRENA調べ)図1 2025年までの太陽光発電の導入コスト予測(IRENA調べ)
太陽光発電の場合は、特に日射量の違いが大きく影響する。3㌣前後の入札が行われている中東や中南米などの地域の日射量は、日本の2倍程度もある。日射量の違いはダイレクトに発電量に影響するから、導入に要するコストが同じでも日射量が2倍ならキロワット時あたりのコストは半分になる。

 こうした事情には注意しなければならないが、それでも風力発電では、5㌣から9㌣程度のプロジェクトは世界のあちこちで実現している。太陽光発電では、日本よりも日照の条件が悪いドイツでも1kWhあたり7㌣という入札が行われている。

 図1は、国際再生エネルギー機関(IRENA)が今年の6月に公表した報告書(〝THE POWER TO CHANGE〝)が示す太陽光発電の導入コストの予測だ。2015年から2025年までに、大規模太陽光発電の導入コストは、世界平均で57%下落するとしている。風力発電についても更なる下落が予測されている。

協定発効を先導した米中印欧は自然エネ先進地

 11月4日、事前の予想よりはるかに早くパリ協定が発効したのは、9月に米中が率先して批准し、インドと欧州連合(EU)が直ちにキャッチアップしたからだ。これらの「パリ協定発効促進チーム」に共通するのは、

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