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沖縄は問う、環境・平和・自治・人権

日本環境会議が明らかにしたこと

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 3日間にわたる日本環境会議が10月21日から23日までの3日間、沖縄国際大学で開かれた。12年前の2004年8月13日にヘリ墜落事件が起きたあの大学であり、「世界一危険」とされる普天間飛行場に隣接する大学だ。

 沖縄大会の全体テーマは、「環境・平和・自治・人権―沖縄から未来を拓く」である。沖縄は、環境・平和・自治・人権の問題が日本で最も先鋭的に問われている場所の一つであり、その沖縄から問題提起をしていこうというのが大会開催の趣旨である。

絶滅危惧種ノグチゲラの悲鳴

大勢の聴衆の前で活発な議論が展開された日本環境会議沖縄大会=2016年10月、沖縄県宜野湾市の沖縄国際大学大勢の聴衆の前で活発な議論が展開された日本環境会議沖縄大会=2016年10月、沖縄県宜野湾市の沖縄国際大学
 「環境」について多くの注目すべき報告があったが、中でも聴衆の耳目を引き付けたのは宮城秋乃さんのビデオを使ったやんばるの紹介であった。秋乃隊員と自称する宮城さんは、やんばるの森をフィールドとする研究者で日本鱗翅学会会員である。聴衆の目の前に、緑かがやく森の中で暮らす小動物たちの息をのむような美しさが繰り広げられた。

 とりわけ秋乃隊員の専門のチョウたちの可憐な姿が輝いていた。そこに突然、オスプレイが特有の轟音を響かせて画面いっぱいに迫ってくる。その轟音に肝を潰して逃げ惑うノグチゲラの雛鳥。やんばるの固有種で絶滅危惧種だ。地球上に千羽もいないとされる彼らの悲鳴が聞こえてくるようだ。高江集落を取り囲むように建設が強行されているオスプレイパッドがいかに許しがたい環境破壊であるのかを雄弁に物語る画像であり、語りであった。

 あと一つ「環境」に関して取り上げておきたいことは、沖縄の現状を踏まえつつ、環境民主主義についての議論が本格的に展開されたということである。事業者の沖縄防衛局が辺野古や高江について実施した環境アセスメントが、いかにアセスとは呼べない代物であり、このようなアセスがアセスとして通用している状況は、日本社会の維持可能な発展を図る上で大きな障害となるという報告が、筆者も含め何人かの沖縄からの参加者によってなされた。

目の前には普天間飛行場が広がる。沖縄国際大には2004年にヘリが墜落した=沖縄県宜野湾市目の前には普天間飛行場が広がる。沖縄国際大には2004年にヘリが墜落した=沖縄県宜野湾市
 これを踏まえて、大阪大学大学院の大久保規子教授から、オーフス条約などの国際環境法制の現状が報告された。環境情報への市民アクセス、環境に関する意思決定への市民参加、環境アセスが不備の場合の司法救済へのアクセスというオーフス条約の理念が、西欧諸国のみならず、いまやインド、タイ、インドネシア、フィリピン、中国などのアジアの国々においても導入されている。環境民主主義の観点からすると、いまや日本は明らかに後進国である。

 しかし国の環境行政の現状は、「百年河清を待つ」に近い。この点に関して、沖縄県は環境民主主義の観点に立った環境権条例を国を待つことなく先駆的に制定すべきだとの主張を日本環境会議名誉理事長の宮本憲一氏が行ったのは注目に値する。

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