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自然エネルギー電力100%目前のコスタリカ

日本が支援する海外の地熱発電の現場を見る

関根健次 ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役社長、一般社団法人 国際平和映像祭 代表理事

 中米の小国コスタリカに世界の注目が集まっている。

 英シンクタンク・ニューエコノミクス財団(NEF)の「地球幸福度指数(Happy Planet Index、HPI)」2016年版では、3回連続でコスタリカが1位となっているし、1949年以後、軍隊を廃止した平和立国でもある。国土の4分の1以上は自然保護区として指定される環境立国で、地球の地表面積の0.03%しかない国土に、地球上の約6%の生物種が存在する「生物多様性のホットスポット」でもあるのだ。これ以外にもコスタリカの魅力はいくつもあるが、コスタリカが21世紀の理想的国家なのではないかと思った私は、今年夏から1年限定ではあるが、コスタリカに家族で移住し、その理想と現実を学ぼうと暮らし始めたところだ。

地熱発電所「ラス・パイラスI」地熱発電所「ラス・パイラスI」
 今回はコスタリカの自然エネルギー、特に地熱発電に焦点を当てたいと思う。2021年までにはカーボンニュートラルを世界で初めて国として実現しようという目標を掲げるコスタリカは、自然エネルギー大国で、コスタリカ電力公社(ICE)の発表によると、2015年は年初から75日間100%自然エネルギーだけで需要を満たしたというニュースが世界を駆け巡った。1年終わってみたら、何と発電の99%が自然エネルギー由来という結果だった。自然エネルギー100%を国として達成するまで目前の国なのだ。

 東日本大震災後に日本でも自然エネルギーが注目され、固定価格買い取り制度(FIT)の導入によって、太陽光発電を中心に急速に設置が進んでいることは間違いないが、それでも自然エネルギーが電力供給に占める割合は、2015年実績で全体の13%に満たないのが現実だ。コスタリカはどのようにして自然エネルギーへのエネルギーシフトを実現していったのだろうか?

 コスタリカの発電方法は、水力発電がほとんどで、残りは地熱発電と風力発電となっている。山川に恵まれ、環太平洋火山帯に位置する立地条件は、日本と似ているところがある。今では地熱発電が、発電総量の1割以上を占めるようになっているコスタリカ。実は、コスタリカで設置された最初の地熱発電所に、日本が円借款で支援しており、現在建設中の地熱発電所についてもJICA(国際協力機構)が円借款契約をしていることを知り、JICAを取材することにした。

JICAが支援する理由とは?

 JICAコスタリカ支所長の半谷良三さんと、エルサルバドル事務所の高畠千佳さんにお話を伺うことができた。コスタリカの円借款事業はエルサルバドル事務所が担当しているとのことで、コスタリカにおける地熱発電への円借款については、主に高畠さんから話を伺った。

JICAコスタリカ支所長の半谷良三さん(左)とJICAエルサルバドル事務所員の高畠千佳さんJICAコスタリカ支所長の半谷良三さんとJICAエルサルバドル事務所員の高畠千佳さん
 コスタリカ側としては2021年までにカーボンニュートラルの実現を目標としているので、発電量での地熱の割合を増やそうという狙いがある。日本の支援の狙いとしては、質の高いインフラを世界中に輸出する政府のイニシアチブがあるという。また、気候変動対策の一環でもある。地熱発電所建設は、中南米に限らずいくつかの国で提案されている。中南米では、ボリビアでも円借款案件が動いているそうだ。地熱発電タービンは日本企業3社で世界の7割のシェアがあり、日本の質の高い技術を活用し途上国の地熱開発に貢献することを目指している。

 日本は、コスタリカ初の地熱発電所であるミラバジェス地熱発電所(1985年12月借款契約調印、1994年3月完成)を支援した実績がある。日本製のタービンは故障が少なく、使いやすいと評判だ。水力発電所の建設支援でも実績があったため、現在グアナカステ州で建設が進む「ラス・パイラスⅡ」(55MW)、「ボリンケンⅠ」(同)、そして「ボリンケンⅡ」(同)の地熱発電所への協力要請があり、コスタリカ政府およびICEとの間で、最大約561億円の円借款に署名している。

 地熱発電所の建設について、住民の理解は得られたのだろうか?

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