問われる日本の漁獲可能量制度の実効性
2016年12月19日
10月末に水産庁は日本の主要な水産資源の資源評価結果を公表した 。資源評価では約40魚種78系群(地域集団、たとえばマイワシは太平洋側と対馬海流側に分けられる)の最近の資源状態を高位、中位、低位に分け、かつ近年の増減傾向を評価する(図1 )。高位、中位、低位とは、原則として過去数十年の最高と最低の資源量の間を三等分した分類で、各系群の現時点の資源量水準がそのどこに位置づけられるのかによって、相対的な資源状態をみることができる。
高、中、低位に属する系群数の変遷を示した(図2、未評価を除く)。2011年頃は低位の系群数が減り、かつ低位の系群の多くは増加傾向にあった (参考)。けれども、残念ながらその後は低位の系群数が1998年頃と同じ程度に多くなってしまい、それらの系群の大半はさらに減少傾向にある (参考)。
1994年に発効した国際連合海洋法条約を日本は1996年に批准、以来、同条約に基づく排他的経済水域(EEZ)を設定した。同条約はEEZ内の水産資源は沿岸国だけが利用できるとする一方、、乱獲を防ぐために漁獲可能量(TAC)を定める責務を沿岸国に課している。1998年からは主要7魚種(現在では17系群)に拡大してTACを毎年定め、さらに水産庁と水産研究・教育機構(水研機構)はTAC非対象種も含めて資源評価を行い、これ以上獲らなければ乱獲にならないという生物学的許容漁獲量(ABC)を算定する。それが外部評価を経てほぼすべての系群で公表される。ただし、TACが定められるのは上記7魚種のみである。
以前はTAC対象魚種でさえABCを上回るTACが設定され、政府が乱獲を公認している
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