桜井国俊(さくらい・くにとし) 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人
1943年生まれ。東京大学卒。工学博士。WHO、JICAなどでながらく途上国の環境問題に取り組む。20年以上にわたって、青年海外協力隊の環境隊員の育成にかかわる。2000年から沖縄暮らし。沖縄大学元学長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
沖縄が大洋州の島々から学べること
もう四半世紀近くになるが、東京大学に勤務していたころから、私は青年海外協力隊派遣予定者の派遣前の研修を行っている。彼らの職種は環境教育だ。世界の73億の人口のなかには、飲んで当たらない水が手に入らない人々がおよそ10億人もいる。水の問題やトイレの問題、そしてゴミの問題など、これらの人々の衛生環境の改善に資する技術の開発普及こそが私の専門であり、東大でもそれを院生を対象に教えていた。
しかし、途上国の現場に入って汗を流そうという若者が全く出てこない。日本の快適な環境から抜け出したくないのである。そこで青年海外協力隊の事務局に押しかけ、環境をテーマにこれから途上国で働こうとしている若者たちに多少でも手助けになればと研修を始めたのである。
その際に、彼らに注意喚起を促す問題の一つが気候変動への適応(adaptation)である。
日本ではなぜか地球温暖化という言葉が多用されるが、私見では、これは日本社会をミスリードしている。温暖化も含む様々な形の気候変動こそが問題だからであり、気温の上昇だけが問題ではないからである。
多くの途上国は、温室効果ガスの排出量は先進諸国に比べれば格段に少ないが、対処能力の制約もあり、その影響となると甚大である。海面上昇の影響をもろに受ける地域もあれば、降雨パターンの変動が大きくなり、降れば土砂降り、降らなければ大干ばつとなって、気象災害への備え、農業への悪影響などで振り回されている国が急増している。エルニーニョの年とラニーニャの年の降雨量の違いがますます顕著になっているからだ。この変動に適応し、その影響を緩和するノウハウの開発・普及が急務となっている。
先進国の中で、この気候変動問題に最も鈍感な政府、そして社会は、