原料原産地の表示と安全性は、そもそも関係ない
2016年12月14日
すべての加工食品に原料原産地表示を義務付けるという難題を解決するために「国産又は輸入」などという無意味な表示を実施しようとしていることは紹介した。常識的には不可能な表示を義務付けた理由は二つある。その一つは消費者の要求だ。多くの消費者は中国産食品の危険性が高いと信じ、これを避けるために中国産であることが分かるように表示してほしいと要求している。もう一つはTPP対策だ。原産地表示を義務化すれば事業者は国産原料の使用を増やし、国産品の消費が伸びて農業は活性化するだろう。このような農業関係者の要求に応えたものだ。
ところがこの二つの要求は共に誤解に基づくものである。
まず中国産食品の危険性だが、その実態は厚労省が毎年発表している輸入食品の検査結果を見れば明らかである。国産、輸入にかかわらず日本の食品はすべて食品衛生法により厳しく監視されているが、輸入食品監視統計はこの法律に違反した食品がどのくらいあったのかを明らかにしている。検査項目は残留農薬、食品添加物、抗生物質、病原微生物、大腸菌群、貝毒、カビ毒、遺伝子組み換え作物、放射線殺菌など多様である。
最新の平成27年度の結果を見ると、輸入件数の多い上位5か国の違反率数は、中国が0.23%、米国0.42%、タイ0.55%、韓国0.49%、フランス0.26%で、中国の違反率はむしろ低い。さらに違反の内容は各国とも健康に被害を与えるような重大なものではなかった。
「1%以下であっても違反は許せない。国産品はもっと安全なはずだ」。そんな声があるので、両者の違反率を比較してみよう。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください