生物多様性世界一の課題は、国民の環境意識
2017年01月04日
前回に続いてコスタリカを代表する自然保護区、モンテベルデの雲霧林で昆虫の研究を続けている「探検昆虫学者」、西田賢司さん(44)のインタビューをお届けする。
コスタリカで小さな蛾(ガ)を研究対象に選んだのは、皆がやりたがらないからだ。最初は蝶(チョウ)の研究をしていたが、半年ほど経ってから蛾の研究も始めた。1年が過ぎたころから小さな蛾を主な研究対象にし始めた。
小さな蛾に飽きたことはない。多種多様で生態が解明されていないものばかり。昆虫のなかでも分類が不安定で難しい。数ミリの小さな蛾をきちんと標本にできる人なんて、世界中探してもほとんどいない。5ミリほどの小さな蛾の専門家は、アメリカ大陸全域でも10人程度。
昆虫学者の間では、そもそも蝶と蛾が嫌われがち。翅(はね)を広げるから標本箱のスペースを取る。鱗粉(りんぷん)が飛んで散らかって、他の昆虫の標本にへばり付く。だから嫌われる(笑)。昆虫学の基本は標本作り。きちんと標本にできないと何も進まない。
手先が器用なことが幸いした。2歳の誕生日のプレゼントが小刀で、鉛筆をそのころから削っていたから手先が器用になった。バイオリンも小さいころからやっていたことも役立っているんだと思う。
コスタリカは熱帯なので、日本にもアメリカにもいないような、多様な生物がいることは知っていた。でも、ここまで多様だとは、コスタリカに来てから気づいた。複雑で多様で、人間の脳は追いつかない。コスタリカが密度的に生物多様性世界一なのではないか、と思い始めたのは、モンテベルデの雲霧林に移り住んで1年、2年経ったころからだ。
コスタリカでは自然保護面積が広がっていて、都心部を除けば生物多様性がある程度保護されている。国土の3分の1以上が、自然保護区や国立公園になるのではないかと。世界中で生物多様性が失われている昨今、ここモンテベルデは、生物多様性の「最後のとりで」になるかもしれない。
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