原型炉に失敗したのに、なぜ実証炉ができるのか
2016年12月26日
12月21日、政府の「原子力関係閣僚会議」は、「高速炉開発の方針」、並びに「『もんじゅ』の取り扱いに関する政府方針」を発表し、もんじゅは廃炉にするが、高速炉開発を継続し、その実用化をめざすこととした。これが、9月21日に政府が発表した「抜本的見直し」の回答である。はたして、もんじゅなしの高速炉開発計画に合理性はあるのか。さらに、高速炉を含む核燃料サイクルとの関係はどう考えればよいのか。過去の経緯と原子力全体を取り巻く環境も踏まえて、原子力政策の矛盾を検討してみたい。
今回の「方針」は、2014年4月の「エネルギー基本計画」にのっとって開発計画を見直したとしている。しかし、今回の「方針」は、「基本計画」にも書かれていない「実用化」さらには「実証炉」計画が検討もされないまま復活している。
基本計画では、「将来、使用済燃料の対策の柱の一つとなり得る可能性があり、その推進は、幅広い選択肢を確保する観点から、重要な意義を有する」(太字筆者)とあくまでも研究開発の一部として位置付けており、実用化の言葉は一言も見当たらない。どうも今回の「抜本的見直し」は、福島事故の反省どころか、なんと2006年「原子力立国計画」にまで戻ったようだ。当時も、2005年の「原子力政策大綱」で書かれていた「将来における核燃料サイクルの有力な選択肢である高速増殖炉サイクル技術」という言葉がなくなり、「高速増殖炉の早期実用化」が明記されて、実証炉計画が復活したのである。
今後も高速炉の研究開発を進めるとしても、もう一度原点にもどって、技術革新を目指した基礎基盤研究から立て直すことが望ましい。実用化を目指すより少ない費用で、十分有効な基礎基盤研究開発が可能だ。また、福島事故以降の優先順位を考えれば、高速炉の実用化よりも、福島原発の廃炉や放射性廃棄物処分など、優先順位の高い研究開発課題に費用を振り向けることを考えるべきだろう。
2015年11月の原子力規制委員会による勧告を受けた後、本来は「原型炉」の運転にとって不可欠ともいえる「電力業界の協力」が得られなくなった時点で、もんじゅの運営主体は宙に浮いたものとなり、「廃炉」は当然の帰結だといえる。そうであれば、実用化にむけて電力業界が「協力」することはどう説明できるのであろうか。技術的には「原型炉」の運転経験なしに「実証炉」や「実用化」に電力業界が協力することは極めて困難であり、今回の計画で最も矛盾に満ちた点である。
ではなぜ電力業界は、もんじゅには協力しないが、今回の開発計画には協力者として参加したのか。
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