欧米の研究者たちの強い危機感、生命医学研究に革命到来?
2017年01月17日
細胞を使った実験で有望な物質が見つかったら動物実験をし、次に人間で安全性と有効性を調べ、結果が良ければ新薬誕生――長年続いてきたこの生命医学研究のやり方にいま、大きな危機が訪れている。同じ実験をしても結果が同じにならない、つまり再現性がないというケースが余りに多いのだ。再現できない実験をいくらやっても研究費をどぶに捨てるようなもの。危機感をもった研究者たちが、再現できない理由の解明と対策に乗り出している。
再現できないと聞くと実験に不正があったのだろうと思いがちだが、バイオ分野の場合、実験条件を完全に一致させることは難しく、不正がなくても再現できない例は珍しくない。それにしても、2012年にネイチャーにバイテク企業アムジェンの研究者が発表した「がん治療分野の53の有名論文を追試したら6つしか再現できなかった」という記事の衝撃は大きかった。89%が再現不能という余りにも高い率に、誰もが腰を抜かした。
昨夏に英国マンチェスターで開かれたユーロサイエンスオープンフォーラム(ESOF2016)でも、この問題を論じる分科会がもたれた。そこで発表されたデータによると、ほかの調査でも再現不能率は78%(67論文のうち)、54%(238論文)、51%(257論文)、51%(80論文)と高い。どう見ても半分以上の論文が再現できないのだ。
そうだとすると、米国のバイオ研究費のうち年280億ドル(3兆2500億円)が無駄になっているという、とてつもない数値が出てくる。生命科学研究の危機だと多くの人が深刻に受け止めたのも当然だろう。
ジョンズホプキンス大学のトマス・ハータン教授のグループは、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください