世界で高まる水産物の需要、日本の漁業はそれに応えられるように変革を
2017年02月13日
豊洲移転問題が長引いています。これを「漁業の観点」から分析をしてみたいと思います。築地市場には、たくさんの魚介類が、所狭しと並び、毎朝多くの外国人観光客が訪れています。彼らの目には、どのように映っているのでしょうか。
築地市場は、1935年に日本橋から移転した世界最大規模の水産物の卸売市場です。1980年代から1990年ごろのバブル期においては、取扱数量で約90万トン、取扱金額9,000億円でした。しかしそれが、現在では約45万トン、4,500億円と半減です。
水産物市場での販売を取り仕切る、大手荷受業者の取り扱いは、生鮮魚介類で約4割、塩干加工品と冷凍魚介類が、それぞれ3割程度という数字です。国内の水揚量は年々減少し、2015年は469万トンと過去半世紀で最低の数量となり、鮮魚の供給も減少しています。
国内水揚げの減少は、輸入水産物によって補われてきました。しかし、世界で水産物の需要が増加を続け、いわゆる「買い負け」という言葉に代表されるように輸入水産物の減少が続いています。水産物の輸入数量は、2016年で237万トンと27年ぶりの低水準です。冷凍や塩干加工品に向ける魚も減ってしまっています。
国内水揚げと輸入水産物の減少は、築地市場の取り扱い減少にかかわり、関係者に重くのしかかってきます。さらに大手小売業者や外食産業等を中心とした「市場外流通」により、築地市場のような市場を通さない取引の影響もあります。
魚の市場流通のことになると、築地市場がクローズアップされることが多いのですが、取り巻く環境は厳しいながらも、全国の卸売市場では、断トツの集荷力があります。地方の卸売市場はもっと厳しい状況で、2002年に321あった地方卸売市場(消費地)は2014年には262へと減少しています。
また、地元で水揚げされた魚を、塩干物等に加工する業者の数も、減少が続いています。前浜の魚の減少を補ってきた輸入水産物が減少し、中国を始めとするアジア諸国の加工に対して、競争力が無くなってしまってきているのです。
さらに、世界全体では水産物需要の増加傾向が続いているのに対し、日本では「魚離れ」という逆の現象が起き、ますます厳しくなっています。
ここまでの整理をしますと、国内水揚げ、輸入水産物、国内加工業者、そして国内消費が、共に減少を続けているために、日本中の卸売市場が苦境に立たされていることが、お分かりになるかと思います。
しかしながら、これを漁業の観点からすると、豊洲新市場を含む卸売市場の問題の本質は、実は「水産物の資源管理方法にあるのではないか?」ということが分かってきます。
日本では
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