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将棋の棋士は連盟の奴隷ではない

第三者委員会報告書は民法上きわめて不適切

米村滋人 東京大学大学院法学政治学研究科准教授

 日本将棋連盟で起きた将棋ソフト不正疑惑の余波が続いている。

第三者調査委員会の報告書公表の翌日に記者会見する谷川浩司会長(右)=2016年12月27日、東京都渋谷区の将棋会館、葛谷晋吾撮影

 出場停止処分を受けた三浦弘行九段の疑いが晴れたのを受け、谷川浩司会長と島朗常務理事が辞任したのにとどまらず、2月27日に開かれた臨時棋士総会で理事5人に対する解任動議が出されて3人が解任された。昨年末に出された第三者調査委員会の報告書は、三浦九段に不正の事実は認められないと認定しつつ、連盟の対応を「やむを得ないものだった」と結論づけた。しかし、法律家の立場から見ると、連盟の対応を正当化した委員会の判断はあたかも棋士を連盟の奴隷であるかのように見なす不適切なものである。このような第三者委員会の判断をそのまま放置してはならないと思う。

 第三者委員会は、日本将棋連盟からの委嘱により、(1)三浦九段に不正の事実があったか、(2)三浦九段に対する処分が妥当だったか、の2つの事項を調査した。(1)は「不正の事実は認められなかった」とし、(2)は報告書全39ページ中の約8ページを使って検討している。主たるポイントは、各棋士が連盟との間でどういう関係にあるか、特に、各棋士は、何かしら不正の疑いがあれば簡単に出場停止処分を受けるような弱い立場にあるのか、という点である。

 この点につき、報告書は以下のように述べている。

 まず、

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