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受精卵のゲノム編集は始まるのか

日本国際賞を受賞するクリスパー/キャス9の開発者に聞く

瀬川茂子 朝日新聞記者(科学医療部)

 あらゆる生き物の設計図である「ゲノム」を狙い通りに改変できる技術「ゲノム編集」が、急速に普及している。それまでの技術より圧倒的に効率がよい「クリスパー/キャス9」を2012年に開発した研究者が今年の日本国際賞を受賞する。農作物、家畜、医療への応用が期待される一方、将来、親が望ましい性質の子どもをつくるために使われる可能性なども指摘され、倫理面での議論もよんでいる。受賞が決まって来日した独マックスプランク感染生物学研究所のエマニュエル・シャルパンティエ所長と、米カリフォルニア大バークリー校のジェニファー・ダウドナ教授に話を聞いた。

――論文発表時にこれほど社会へのインパクトがあると予測しましたか?

シャルパンティエ所長  どれだけニーズがあるのかは知らなかった。この技術はとても使いやすいシンプルなものなので、多くの人が使い始めた。

拡大独マックスプランク感染生物学研究所のエマニュエル・シャルパンティエ所長=飯塚晋一撮影

ダウドナ教授  予想外だったことは、これほど速く、技術が普及したことで、その速さに驚いている。論文発表から4年半くらいで、すでに臨床試験が始まっている。

――技術的な課題の克服の見通しは。

シャルパンティエ所長  この技術は、ほかの組み換え技術にくらべて格段に正確な技術だ。ただし、治療へ応用しようとすると、(狙ったところ以外でゲノム編集が起こる)オフターゲットが問題になるが、たくさんの科学者が研究しているので、克服される日は近いだろう。

――技術的課題を克服したら、ヒトの受精卵への応用が始まると思いますか。

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筆者

瀬川茂子

瀬川茂子(せがわ・しげこ) 朝日新聞記者(科学医療部)

1991年朝日新聞社入社。大阪本社科学医療部次長、アエラ編集部副編集長、編集委員などを務める。共著書に「脳はどこまでわかったか」(朝日選書)、「iPS細胞とはなにか」(講談社ブルーバックス)、「巨大地震の科学と防災」(朝日選書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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