石井徹(いしい・とおる) 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)
朝日新聞編集委員。東京都出身。1985年朝日新聞入社、盛岡支局員、社会部員、千葉総局次長、青森総局長などを務めた。97年の地球温暖化防止京都会議(COP3)以降、国内外の環境問題やエネルギー問題を中心に取材・執筆活動を続けている。共著に「地球異変」「地球よ 環境元年宣言」「エコウオーズ」など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「企業が女性を活用できないのなら、起業すればいい」 小池都知事
2月21日に浜離宮朝日小ホール(東京都中央区)で開かれた社会的課題をビジネスで解決する方法を考えるシンポジウム「ソーシャルビジネスで未来をつくろう」(朝日新聞社、九州大学主催)から、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏と、小池百合子・東京都知事との議論の様子を続ける。
――小池知事は、東京都として、仕事を創る、起業に力を入れる、というお話をされました。なかでも女性の役割が重要だと考えているようですね。
小池 ええ、大学卒業するときまでは、1番を始め上の方はずっと女性なのに、いったん社会に出ると、それが一気にひっくり返ると言います。ゲタ履かせてもらっているのは男性なのです。女性パワーをきちんと活用していかなければ、「日本の明日はない」と言っても過言ではありません。
いまロンドン、ワシントン、ニューヨークに行ったら、どれだけ力を持った日本人女性たちがあふれているか。「日本で私を使いこなせないからもういいわ」って、外に行っちゃった人が結構多いですよね。私は、ぜひそういう方々を日本に戻ってもらって、彼女たちが活発に思う存分仕事ができるような環境作りをしたい。
女性のためと言うと、男性が怒るのでそうは言わないのですが、インキュベーションの補助金をつけるなど、女性だけでなく、若い人のベンチャーを育てたいと思っています。
それから、日本の長寿社会では、経験とスキルを持っているのに、会社員は退職してしまうと行き場がない。そういう人たちがもう一度創業するチャンスを創る。例えば、低金利、無担保の融資などで信用金庫や信用組合などとうまくマッチングさせる。
日本が優秀な女性をうまく活用できないなら、その女性がトップになって自分で仕事始めたらいい。そうやって未利用のエネルギー、女性を活用していかないと、「もったいない」と思います。
――女性の役割は、バングラデシュでも依然として重要でしょうか。
ユヌス その前にひとことコメントしたい。定年退職になった人たちが、もう一度起業家として新しい人生を築いていくというアイデアに、完全に同意します。人生の前半では、彼らは会社のために働き、起業家としての能力を引き出して、何ができるかを試す機会がなかったからです。
私自身も65歳を超えていますが、エネルギーもあり、能力もあります。退職という言葉にはずっと抗ってきました。リタイアメントは非人間的な言葉だと思います。あなたはもう役に立たない、という印象を与えます。人間は死ぬまで創造的な存在です。
誰かが「あなたは、この日からはもうここでは働けません」という日付を設定したからといって、何もしないでじっとしている必要はありません。自分で起業して自分自身のために働けばいい。だれかの命令で働くのではなく、