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海外展開をはかるコスタリカの地熱発電

豊富な開発経験もとに、隣国にコンサルティング業務を拡大

関根健次 ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役社長、一般社団法人 国際平和映像祭 代表理事

 国際協力機構(JICA)との円借款契約などで資金を調達し、コスタリカ電力公社(ICE)が建設を進めている最新の地熱発電所「ラス・パイラスII」を訪問した。自国での地熱発電開発の経験に基づいて、隣国へのコンサルティング業務も始めている。中南米における地熱開発の最前線を報告する。

 コスタリカでは地熱発電を重要なベースロード電源と位置づけ、開発を進めていることは、以前の記事で書いた。この時の取材でお会いしたJICAパナマ事務所の高畠千佳さんが、ラス・パイラスIIを視察するので同行した。

日本と緊密なパートナーシップ

 ラス・パイラスIIはコスタリカ北西部、グアナカステ州にある。2018年11月の試運転、19年1月の商業運転開始を目指している。訪問した時点では、発電タービンを設置するエリアの整備中だった。多い時には300名以上の作業員が働く大工事の現場だ。

説明を受けるJICAの高畠千佳さん
 設置される発電用タービンは、日本の三菱日立パワーシステムズ株式会社製だ。世界トップレベルの技術力を持つ西日本技術開発株式会社との間でも、技術コンサルティング契約を結んでいる。コスタリカの地熱発電所の建設が、日本との緊密なパートナーシップによって進められていることがわかる。

 JICAの高畠さんは、去年の取材時点ではエルサルバドル事務所の勤務だったが、今はパナマ事務所に所属する。異動後もコスタリカの円借款地熱発電所の担当であることは変わらず、今回はパナマからの視察となった。円借款プロジェクトの進行度合いを、年2回ほど訪ねて確認するそうだ。

 発電用タービンの設置予定場所から斜面を登ると、蒸気と熱水を運ぶパイプラインが見えた。地熱貯留層から取り出された蒸気と熱水は、このパイプラインを通って発電タービンに届き、タービンを回転させて電気を起こすのだ。

開発経験をもとに隣国を支援

 ICEの地熱資源部門部長のエディ・サンチェスさんが言う。「コスタリカ国内では地熱貯留層のポテンシャルがある場所が国立公園内に位置しているものがほとんどです。現在のコスタリカの法律では、国立公園内での地熱開発は禁止されているため、更なる地熱開発には政治的な判断が必要です」

パイプライン(上)とプール
 そこで視線を向けるのが海外だ。電気・通信を担当するICEでは、ニカラグアと通信分野の協定を結んでおり、共同出資の電話会社が設立されて、通信サービスを開始している。「同じことを、エネルギーの分野でもやりたい」とサンチェスさん。

 斜面を登る途中には、巨大なプールがあった。環境に悪影響を与えないように、使用済みの熱水を地中へと戻したり、発電に使われなかった蒸気と熱水の温度を下げたりするのに使われている。

 他国の地熱発電所では、蒸気・熱水を地下へと戻すための還元井戸などで管理が不十分なために湧き出しが減ってしまい、発電量が低下したケースがあった。このためICEでは、より綿密な貯留層管理をしているという。

 こうした豊富な経験が、国外でも活用できると見ている。「ニカラグアも数多くの火山がありますが、昔開発した地熱発電所では、蒸気・熱水が減少し発電量が下がった痛い経験をしています。そこで、経験豊富なICEが支援することを検討しています」

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