「保護」と「保全」の違いにどう向き合うか
2017年04月20日
生物の多様性を包括的に保全する国際的な枠組みとして1993年に発効した生物多様性条約(CBD)は、国連教育科学文化機構(ユネスコ)が1970年代に始めた「人間と生物圏(MAB)」計画と発想を同じくしている。MAB計画では、下図のように野生生物を手つかずのまま瓶の中で保存するのでなく、人が暮らす中で保全することを目指している。
条約で使われる「生態系サービス」という言葉は「自然の恵み」と言い換えてもよいが、衣食住などの素材となる生物資源だけでなく、森林の洪水調節機能や観光資源などによる恵みも含まれる。人間活動によって生物多様性が損なわれると生態系サービスが損なわれ、ひいては人間の幸福(Well-being)が損なわれるというのが条約の論理だ。これを保護(Protection)に対して保全(Conservation)という。
2010年に日本で生物多様性条約締約国会議(COP10)が開催され、愛知目標と名古屋議定書が採択されたとき、MABと似た考えをSATOYAMAイニシアチブと名付けた決議を採択した。人と自然の「共生」は西洋にない思想と言われるが、MAB計画には似た理念が既にあったのである。
名古屋発でSATOYAMAという言葉が世界に広まったのだろうか。残念ながらそうなっていないことを私は先月ボンで開かれた「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES=イプベス)」で知った。日本政府代表団として参加した今回の経験を中心に、生物多様性を守る国際交渉の現実を紹介したい。
IPBESは2012年に設立された生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価する政府間組織である。今後の持続的利用の評価の枠組み(Scoping)が議論され、その評価対象が野生動植物となった 。この合意文書には「SATOYAMA」という単語自体が入っていなかった。
IPBES総会は政府代表団どうしが議論する場であり、科学者が個人見解を述べるべき場ではない。しかし、情けない限りだが、私は
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