メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

「留年すれば奨学金は永久停止」の暴挙

外国人留学生に対する文科省通知の撤回を求める

松田良一 東京理科大学教授

 人生、七転び八起き。思った通りうまくいかないことは多々ある。それでも努力して、何とか困難を乗り越えて生きていく。そんな紆余曲折は人を強くし、人生を豊かにする。学生時代の留年も、時間の使いようによっては、かえってより大きな意味を持つこともある。

 ところが、平成28年12月19日に文科省高等教育局学生・留学生課留学生交流室が全国の大学、高等専門学校、各種専修学校などの留学生支援担当部署に通知した「国費外国人留学生の成績管理及び学業成績不良等による奨学金支給に関する取扱について(通知)」は全くの暴挙である。各学年進級時に留年すると、その時点で以降の奨学金の受給資格をはく奪し、支給を打ち切るというものだった。

「辞退届」を強制する人権無視

 この国費外国人留学生とは、本国にある日本大使館で国費外国人留学生試験を受けて合格し、日本から給付型奨学金を標準修業年限内で支給される資格を得た留学生のことである。問題はこの「標準修業年限」という規定だ。四年制の大学に入って1年間留年すると、合計が5年になり、この年限を越えてしまう。国費留学生が留年すると奨学金支給は廃止され、それ以降は授業料を払い、生活費も別の手段で得なければならなくなり、辛酸を味わう。

拡大文科省のサイトに掲載された通知
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1380745.htm

 留年期間中の支給停止はやむを得ないとしても、その後、努力して進級できても、奨学金支給は再開されないのは問題だ。2年生や3年生への進級時に留年をすると、奨学金の支給はわずか1年や2年で打ち切られてしまうことになる。

 文科省は留年した留学生本人の意思に反して無理やりに「国費外国人留学生の辞退届」を書かせ、涙ながらに大学に提出させる。これは明らかに人権上の問題といえる。アメリカの大学で学ぶ日本人学生3名に聞いたところ、これがアメリカなら大学は訴訟を受けるだろうといわれた。

 文科省の今回の通知は、通知文の中にあるとおり、平成19年の通知に続くものだ。今回の内容について、文科省は「取り扱いについて大きな変更がなく、留学生にとって不利益となる変更ではない」としているが、19年の通知では支給継続を考慮することを認めていた「傷病が原因である留年」についても「原則考慮しない」に硬化させている。これは、明らかに人道的に正当化できない見解である。

日本は「リベンジに価値を認めない国なのか

 また平成19年と28年の通知はいずれも、奨学金の支給取りやめに相当する条件として、「留年等が確定した場合」としている。しかし、同じ文科省高等教育局でも日韓共同理工系学部留学生への奨学金支給の場合は、 ・・・ログインして読む
(残り:約1112文字/本文:約2183文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

松田良一

松田良一(まつだ・りょういち) 東京理科大学教授

1952年生まれ。帝京大学医学部衛生学教室教務職員として勤務しながら東京都立大学理学部(夜間部)を卒業。千葉大学大学院修士課程修了、東京都立大学大学院博士課程中退。理学博士(1982年)。東京都立大学助手、米国W. Alton Jones細胞科学センター主任研究員、東京大学教養学部教授などを経て現職。共著・編著に『英語論文セミナー 現代の発生生物学』『世界の科学教育』など。2012年、日本動物学会教育賞。国際生物学オリンピック運営委員、同日本委員会運営副委員長を務め、2018年から国際生物学オリンピック議長。

松田良一の記事

もっと見る