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トランプ政権の環境政策がもたらす深刻な影響

台風・海面上昇・高水温——沖縄が受けるトリプルパンチ

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 トランプ政権が始動して100日以上が経ったが、世界はいまもトランプ・ショックで激しく揺れ続けている。選挙戦中、トランプは「アメリカ第一主義」のもと、軍事・安全保障政策ではNATOや日本・韓国との同盟への懐疑を強く打ち出していた。このため沖縄には、在沖海兵隊の見直しにつながるのではとトランプ政権に期待する向きがないわけではなかった。

 しかしこの見込みは完全に外れた。米韓軍事演習に北朝鮮が核・ミサイル開発攻勢で対抗したことから、トランプ政権は軍事を含めたあらゆる可能性を排除せずに制裁を行うと全面的に対峙する姿勢を打ち出したからである。これで朝鮮半島をめぐる軍事的緊張が一挙に高まった。在日米軍基地の7割(専有施設、面積ベース)を抱える沖縄は、北朝鮮のミサイル攻撃の第一の的となることから、嘉手納基地をはじめとする在沖米軍基地では攻撃された場合を想定した反撃訓練を行うなど緊張感が急速に高まっている。

 沖縄にとって最大のトランプ・ショックは、その軍事・安全保障政策がもたらすものであるが、この稿では選挙戦中に気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定である「パリ協定」離脱を宣言したトランプの環境政策が沖縄にもたらす影響について見てみることとする。

台風の脅威は3倍増に

 沖縄は、地球温暖化がもたらす影響を日本で最も深刻に被ることとなる。影響の筆頭は台風だ。沖縄は台風常襲県であり、民家もコンクリート造が基本となっている。その台風の脅威が、地球温暖化によって3倍増になると予測されるからだ。

カテゴリー別の熱帯低気圧の割合。規模が大きなカテゴリー4や5が増えている(IPCC第4次評価報告書)
 第一には、右図に見られるように、台風が近年巨大化してきていることがある。2005年に米国ルイジアナ州を襲ったハリケーン・カトリーナが良く知られた例だ。巨大化の原因は地球温暖化である。台風やハリケーンは、温められた熱帯の海の熱を温帯に運ぶ役割を果たしており、熱帯の海が過剰に熱くなれば、より多くの熱供給を受けて巨大化するのである。

 第二には、温暖化による海面の上昇である。海面上昇は水の体積膨張が主たる原因となって起きるが、平均3000メートルの海がすべて1度温まれば、60センチメートルの海面上昇が起きる。那覇の年間平均潮位は、ここ40年間で11.8センチメートル上昇している。

国内で最大のサンゴの海「石西珊瑚」
 そして第三には、天然の防波堤であるサンゴ礁が、海水温の上昇を主原因とするサンゴの白化によって急速に劣化していることである。今年2月20日の沖縄タイムスは、長期にわたる高水温が原因となって昨年9月時点で石西礁湖のサンゴが7割死滅し、主要10種で98%超が白化していたと一面トップで報じた。石西礁湖とは左図に示すように石垣島と西表島の間にある国内で最大のサンゴの海である。ここでは2008年にも7割のサンゴが死滅する白化現象が起きているが、近年、サンゴが回復する暇もなく大規模な白化現象が繰り返し発生している。

 沖縄にとっては、まさにトリプルパンチである。この事態に将来世代は対応できるだろうか。外洋に面した堤防の場合、

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