世界でも稀な日本の産官学連携の取り組みに注目を
2017年07月06日
陸上の森林などが吸収する二酸化炭素を「グリーンカーボン」というのに対し、マングローブや藻類など沿岸海洋生態系が吸収するものを「ブルーカーボン」という。海底に堆積した炭素は数千年は分解されないという。単位面積当たりの炭素貯留量は、ブルーカーボンのほうがグリーンカーボンより一桁大きく、マングローブでは林齢とともに貯留能力が増す。
http://www.city.yokohama.lg.jp/ondan/ygv/bluecarbon/h28ybcchirasi.pdf
2017年6月の国連海洋会議でブルーカーボンへの各国の取り組み が紹介された。日本では、横浜市が2011年から「横浜ブルーカーボン」事業を始め、2013年から世界トライアスロン大会参加者にこの行事で排出するCO2を相殺するための炭素オフセットへの協力を呼び掛け、集めた資金で藻場造成等の緩和策を進めている。それと並行して2017年2月に学識者と関係団体による「ブルーカーボン研究会」が発足し、関連書籍も出版された。産学と自治体の連携によるこれらのブルーカーボンの取り組みは、国連海洋会議で披露された各国の例を見ても、世界の最先端事例といえるだろう。
日本が世界に誇れる取り組みだが、残念ながら国外は言うに及ばず、国内でもあまり知られていない。7月18日に東京、8月22日に神戸で「ブルーカーボンセミナー」が開催されるので、関心ある方はぜひ参加いただきたい。
気候変動対策は、環境政策の最優先課題である。ただし、気候変動をもたらす温室効果ガス排出を削減し、吸収を増やす緩和策だけでなく、気候変動による人間活動や生態系等に及ぼす悪影響を削減する適応策も論じられるようになった。1997年の京都議定書(2005年発効)では陸上の植林などが緩和策とみなされたが、藻場などによるブルーカーボンが国際的に取り上げられるようになったのは2009年の国連環境計画(UNEP)報告書からである。緩和策としての効果が定量的に認知されるまでには至っていないが、海の表層自体が温室効果ガスを吸収するほか、海洋生物を通じて中深層に取り込まれる。沿岸の藻場の場合、炭素を吸収するか放出するかは条件次第である。港湾空港技術研究所の桑江朝比呂博士らは、都市の生活排水の影響がある場所でも、藻場が吸収源になり得ることを示した。マングローブ林の炭素貯留は、木質部への吸収よりも土壌中の堆積が大きい。もし、マングローブ林を開発すると、土壌中のCO2を大量に放出させてしまう恐れがある。
気候変動政策では、京都議定書の頃には法的拘束力ある削減目標をもつのは先進国に限られていた。
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