永久凍土内の泥炭が融解して燃える「温暖化防止と保護のジレンマ」
2017年09月08日
グリーンランド観測史上で最大の山火事が話題になっている。これは7月末に発生し、3週間燃え続け、雨でようやく鎮火した。
場所が場所だけに、グリーンランドの大規模な山火事は、他の場所の山火事とメカニズムが異なり、同時に地球環境への影響も色々予想されるので、山火事関係者のみならず温暖化関係者や極域環境関係者などの興味を引き、欧州宇宙機関(ESA)や米国航空宇宙局(NASA)、米国海洋気象局(NOAA)もニュースとして衛星写真を掲載してる。そこで本稿では、グリーンランドの大規模な山火事の特異性や環境への影響の可能性について私見を述べたい。
まず、一般の方は、面積の8割が氷で覆われたグリーンランドで大規模な山火事が起こること自体が不思議に思われるだろう。ケッペンの気候区分で寒帯(最も暖かい月の平均気温が摂氏10度未満)と分類されるように、氷のないところも南端までツンドラ気候で、大半は岩がむき出しになった荒れ地だからだ(高山と同じ)。もちろん海岸部には1000年以上も前から人の住む村があり、全てが氷に覆われている訳ではないし、カンゲルルススアーク等ごく一部の地域は冷帯で、所々に灌木の茂みや湿地、草原も見受けられる。しかし、少なくとも森林と呼べる密度の植生はなく、「山火事=森林火災」という日本の常識は通用しない。
人工衛星から確認できるほどの山火事がなぜ起こるのか。
半分大陸とも言えるグリーンランドは少し内陸に入ると乾燥しやすく、もしも灌木や草原があれば、火事は十分に起こりうる。しかし、山火事として広がるほど広範囲に敷き詰めるようには密集していない。
そこで多くの科学者が推測しているのが、泥炭や泥炭になりかけの枯れ木が燃えているのではないかというシナリオだ。現に、数日おいた衛星写真を比較すると、火災が起こっている場所はほとんど移動していない。つまり、地表で何かが燃え広がっているのではなく、地下が燃えていると考える方が自然なのである。その意味では山火事というより、ゴミ埋め立て地等で起こる地下火災に近い。
泥炭の火災シナリオで問題となるのが、なぜ「今」なのかだ。そんな泥炭があったら、とっくの昔に燃え尽きていたはずだからだ。しかし、これには答えがある。地球温暖化で、永久凍土(凍った泥炭層)が融け、可燃状態になったというものだ。永久凍土が融け始めていることは北極圏のほぼ全ての経度で観測されている。となれば、このシナリオは極めて現実的であり、同時に同じことがシベリアやアラスカ・カナダのツンドラ帯でも起こりうることを示唆している。
昨年、山火事についての一般論を書いた際、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください