推定量の不確実性を直視し、「順応的管理」を取り入れよ
2017年09月11日
現在、WCPFCは「2024年までに親魚を4.1万トンに60%の確率で回復させる」との目標を掲げ、漁獲枠を決めている。韓国・釜山で9月1日まで開かれた北委員会で、日本政府は「資源量の回復の可能性が60%を下回れば漁獲枠を減らし、65%を上回れば漁獲枠を増やす」という新ルールの提案をした。増やすときの基準をより厳しく75%とすることで合意が成立し、また親魚の量を2034年までに「初期(英語ではUnfished)親魚資源量(以下Bゼロ)」の20%に増やす目標も決めた。
議論の前提となっている資源量は、WCPFCの国際科学委員会(ISC)が発表したものである。2014年に親魚資源量は約1.7万トンと推定され、これがBゼロの2.6%と言われた。Bゼロとは、同じ加入量(漁業の対象になるまで成長、生残した個体数のこと)に対して漁業がない場合の全体の数と位置づけられていて、約65万トンとなる。今回合意された目標「20%Bゼロ」はおよそ13万トンにあたる。
問題は、これらの数字の不確実性が高いことであり、昔はBゼロだけ資源があったということを意味しないということだ。環境問題では、将来の懸念に予防原則に基づいて対処することが多い。そのため、未実証の悲観的な前提に基づいた数値解析が多用される。当然ながら、試算された数字が不確実であることに留意せねばならない。しかし、しばしば「都合のよい作り話」が「不都合な真実」よりも多用される。これは政府だけでなく、環境団体も変わらない。Bゼロが不確実である以上、20%Bゼロという目標には、つねに異論が付きまとう。
米国トランプ政権は
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