6回目の核実験強行は「核抑止力」の無力を示すことに気づこう
2017年09月13日
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は2017年9月3日に6回目の核実験を行い、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載のための水爆実験に完全成功した」と発表した。度重なるミサイル発射と核実験は、国連安全保障理事会決議違反であり、国際社会として絶対に許容できない。一方で、北朝鮮の「挑発」活動に対し、米トランプ政権を中心に、米日韓政府はこれまで以上の軍事圧力を強めており、今までにないほどの緊張関係が続いている。さらに、韓国だけではなく、日本国内にも、「独自の核抑止力」を持つべきだ、との意見が目立ち始めた。折しも8月25~29日、カザフスタンで開催された第62回パグウォッシュ会議世界大会に参加し、国際社会が持つ北朝鮮への危機感を肌身で感じた。そこでの議論なども踏まえて、昨年1月20日の本欄「北朝鮮『核実験』にどう対応すべきか」で書いた「北東アジア非核兵器地帯の実現を」という提言をさらに見直す形で検討してみたい。
いずれにせよ、ミサイル搭載可能な「核兵器の小型化」は時間の問題であり、北朝鮮の核兵器能力はほぼ完成の域に近づいたとみてよいだろう。今後も核実験を繰り返す可能性もあるが、それがなくとも、十分な核兵器能力を既に獲得したと考えるのが妥当だ。ミサイル発射実験がさらに進めば、核兵器能力はもはや「挑発外交の手段」ではなく「本格的な核抑止力」を持つことになる。これは、北東アジアのみならず、世界にとっても深刻な核の脅威として認識されねばならない。
ここまでくると、第1に懸念するのが、「レッドライン」(米国が軍事攻撃を行うか否かの判断基準)を超えたかどうかという点だ。北朝鮮にしてみれば、「核抑止力の強化」で米国は手を出せない、と思っているかもしれないが、米国にしてみれば、これ以上の核能力強化を認めないと判断すれば、軍事行動に出る可能性も十分にある。したがって今回の核実験は、北朝鮮にとっては極めて危険な賭けということになる。
第2に「非核化を要求するのは非現実的」という見方が広がり、「北朝鮮を核保有国として認知」すべきとの見方が出始めることだ。そうなると核拡散の歯止めが外れ、雪崩現象が起きる恐れがある。
その概要は以下の通りである。
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