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ノーベル物理学賞は今年こそ「重力波」

今年6月に3つ目を観測、検出の正しさに疑問の余地なし

大栗博司 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構長 、 カリフォルニア工科大学教授 ・理論物理学研究所所長

 4年前の夏にWEBRONZAの執筆を引き受けてから、毎年ノーベル物理学賞授賞者の予想記事を寄稿してきた。昨年は、「重力波の直接観測に対して、カリフォルニア工科大学(カルテク)のキップ・ソーンとロナルド・ドレーバー、マサチューセッツ工科大学(MIT)のライナー・ワイスの3名が受賞するのは、ほぼ確実だろう」と書いて外してしまったので、今年は遠慮しておこうと思ったのだが、やはり書いておくべきだろう。

近づいていくブラックホールのイメージ図=LIGO/Caltech/MIT/Sonoma State (Aurore Simonnet)

 カルテクとMITが運営している重力波天文台LIGOは、2015年の9月14日に13億光年かなたのブラックホール合体から届いた重力波を検出し、2016年の2月12日(日本時間)に発表した。アインシュタインがちょうど1世紀前に予言した重力波を直接観測し、宇宙の観測に新しい窓を開いたことは、ノーベル賞に値する業績である。昨年授賞がなされなかったのは、重力波検出が正式に発表されたのが2月で、授賞選考の日程に間に合わなかったからだとも言われている。しかし、特別な発見があった場合には、選考日程に例外を設けることがあるとも聞いている。

 本当の理由は、昨年の前半までは検出例がひとつだけだったので、観測に間違いがなかったのか選考委員会が確信を持てなかったことかもしれない。ノーベル賞のおかげで、スウェーデンの科学界は、そのサイズを上回る影響力を持つようになっている。ノーベル賞を授賞する権限はスウェーデンの大切な資産であり、その権威を保つのは国策としても重要である。少しでも不安があれば、授賞を延期するというのは自然な判断だろう。2014年3月に、初期宇宙の観測チームが、原始の重力波の痕跡を検出したとの発表をしたが、後に天の川銀河のなかのチリの効果を見間違ったことが分かって、発表を取り下げたとことがあった。そのため、重力波の検出に対する授賞にはとりわけ慎重だったのかもしれない。しかし、昨年の6月には2つ目、さらに今年の6月に3つ目の観測の発表があり、重力波の検出が正しく行われていることに疑問の余地はなくなった。

3つ目の観測結果=LIGO/Caltech/MIT

 これまで発表された3件は、いずれもブラックホールの合体から発せられた重力波であった。しかし、LIGOの計画段階では、

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