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平和賞は核廃絶運動関連と予想する

日本の被爆者団体がついに受賞か?

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 今年のWEBRONZAのノーベル賞予想は、科学3賞にとどまらず平和賞にもウィングを広げてみたい。核兵器禁止条約が7月に採択されたことを受けて、今年の平和賞は核軍縮につながる仕事をしてきた誰かに与えられると予想する。条約の採択が7月では今年の審議に間に合わなかったかもしれないが、北朝鮮の核実験に世界が危機感を募らせている今、国際社会の「圧力」として無理してでも核軍縮関係に平和賞を与える可能性は低くないと思う。日本の被爆者や関連団体はこれまで何度も平和賞候補として取り沙汰された。今年こそ受賞となるかもしれない。

核軍縮関係の受賞者は多い

2009年12月、ノーベル平和賞の授賞式で演説するオバマ米大統領=ロイター

 ノルウェーの平和賞委員会は、軍縮を進めた人や団体を何度も選んできた。とくに核軍縮関係では、1962年のライナス・ポーリング(アメリカの化学者、平和運動家)、1975年のアンドレイ・サハロフ(ソ連の物理学者、人権活動家)、1982年のアルヴァ・ミュルダール(スウェーデンの社会運動家・軍縮運動家)らがいるほか、1985年には「核戦争防止国際医師の会」、1995年には「バグウォッシュ会議」とジェセフ・ロートブラット(パグウォッシュ会議運動を創設時からリードしたイギリスの核物理学者、2005年没)、2005年には国際原子力機関(IAEA)と事務局長モハマッド・エルバラダイ氏と、団体の顕彰もしてきた。

 2009年にバラク・オバマ米大統領(当時)を「核なき世界」に向けた国際社会への働きかけを評価して選んだのは記憶に新しいだろう。このときは「まだ何も達成していないのに」と批判が出たが、そうした批判を承知でオバマ氏にしたところに平和賞委員会の核廃絶に向けた強い意志を感じる。

 パグウォッシュ会議とは、科学者が核兵器の危険性や科学者の社会的責任を討議する場として、1954年のビキニ環礁での水爆実験をきっかけに生まれたものだ。第1回会議は、1957年7月にカナダの漁村パグウォッシュに22人の東西の科学者が集結して開かれた。日本からは湯川秀樹、朝永振一郎、小川岩雄の3人が参加した。

 その後、毎年のように世界大会が開かれ、今年はカザフスタンで第62回大会が開かれている。「少数の科学者が集まって討議する場」から「核軍縮を進めるために多様な立場の人が集まって議論する場」へと変わってきたが、核兵器と戦争の根絶を訴えた「ラッセル=アインシュタイン宣言」(1955年7月9日)を原点とする理念は変わっていない。

平和賞ももらった化学者ポーリング

 この宣言の11人の署名者の1人であるライナス・ポーリングは、

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