工房「Makers’Base」の週末ワークショップに集まる女性たち
2017年11月06日
ものづくりのワークショップというと、どんなイメージを持つだろうか。「作ることの楽しさを体感する」、「作る技術を学ぶ」、「世の中に一つしか無い自分モデルを作る」。作る過程や作るものへの思い入れに関することが多いかもしれない。しかし、家に居ながらにしてあらゆるものが買えてしまう時代を経て、モノの消費からコトの消費に注目が集まり、さまざまな体験型のコンテンツが増え続ける今、単純なものづくりだけ体験だけで人を集めるのは難しい。
今日、さまざまな場面で「インスタ映え」という言葉を見るように、写真映えしやすい商品やサービスを提供するといったSNSでのアピール力も、あらゆるシーンで重要な要素として評価されるようになった。SNSでのPR力のせめぎあいとコト消費がひしめく時代の中で、年間1万人以上の人がワークショップに訪れるユニークな工房が東京にある。
東急東横線の都立大学駅から徒歩3分、会員制工房「Makers‘ Base」には、週末ともなればワークショップに参加するため、多くの人が1階のエントランスに詰めかける。
Makers‘ Baseは2013年に目黒でオープン、2016年に現在の拠点に移転した。地下1階・地上5階建てのビル全てを工房として提供している。機材ごとの講習を受ければ、定額の会費で自由に機材を使え、木工、金工、縫製、テキスタイルに関するプロ用機材に加え、レーザーカッターや3Dプリンターといったデジタル工作機械(データ通りに加工する機械)も利用できる。
平日は会員による工房利用が中心だが、週末はワークショップを中心に営業していて、電話やウェブサイトで申し込めば会員登録していなくても参加できる。実際にワークショプに訪れる参加者の大半は非会員だという。
ワークショップで制作するのは指輪やイヤリングといったアクセサリーや、パスケースにクラッチバッグといった雑貨、木製の皿やスツール、錫の酒器や陶器と普段の生活で使うものが大半だ。価格は7000円から1万円と決して安くはないが、一般の店舗に並んでいてもおかしくないレベルのものが制作できる。
最も人気のワークショップは真珠のアクセサリー。アコヤ貝を選び、貝から真珠を取り出すところから参加者が行う。B品の真珠もあれば、一つ数万円にもなる真珠もある。こうした選ぶ楽しみが参加者に受け、SNSでの口コミやメディアの紹介を通じて、常に人気のワークショップとなっている。
週末は全てのフロアが20代から30代の女性を中心に賑わい、昨年は延べ1万5000人がワークショップに参加、うち3割がリピーターだという。筆者はこれまで国内外70カ所ほどの会員制工房や工作機械が使える店舗を取材しているが、ここまでワークショップで人が集まる拠点はMakers‘ Baseしか知らない。
Makers‘ Baseが徹底しているのは、作るものの質が高いことだけなく、作る過程に価値をつけることだ。身近なファッションアイテムを題材に選び、機材や道具はプロと同じものを使うことで非日常の体験が得られる。
進め方にも工夫がある。ワークショップ中に参加者が写真を撮りやすいよう機材を配置したり、講師が加工している時に写真や動画が撮れるよう、参加者に作業している様子を見せたりしている。スタッフから写真を撮るタイミングを言うことはないが、ごく自然に写真を撮れるような工夫と配慮がなされている。
こうして参加者は作品を制作しながら、その制作過程をおさめた写真や動画をSNSに公開することで、ワークショップの後も思い出に残る体験ができる。Makers‘ Base代表の松田純平さんによれば、作るものだけでなく作っている様子をSNSで共有したいというニーズは高いという。
そのニーズに気づいたきっかけは
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください