小林 哲(こばやし・てつ) 朝日新聞記者(科学医療部次長)
1996年入社。科学医療部、広州・香港支局長、文化くらし報道部などを経て2014年4月から17年8月までワシントン特派員。ツイッターは@kbts_sci
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
トランプ大統領とは関係無しに、米国という国家自身がパリ協定を進めていく
地球温暖化対策への貢献で2007年にノーベル平和賞を受賞した元米副大統領のアル・ゴア氏が来日し、朝日新聞などのインタビューに応じた。
アル・ゴア氏は、2006年の米国映画「不都合な真実」に主演。地球温暖化問題に警鐘を鳴らすゴア氏の活動を描き、第79回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞などを受賞した。
この映画の続編「不都合な真実2:放置された地球」が、11月17日から日本で公開される。作品はこのほど、第30回東京国際映画祭でクロージング上映され、ゴア氏も登壇してあいさつをしていた。
インタビューでは、日本が発展途上国の石炭火力発電所建設を支援していることへの懸念や、ドイツで開かれている国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)への期待を語った。
――なぜいま「不都合な真実2」なのですか?
前作の映画から10年がたち、「気候変動の現状はこうなった」と再び世に問うよいタイミングになった。この間、世界には二つの大きな変化があった。一つは、異常気象が激しくなり、かつ頻発するようになったこと。しかしもう一つはよい変化で、問題の解決策が生まれて広がっていることだ。
太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーや、電気自動車のような新しい技術が登場して、年ごとに価格が下がっている。米国では昨年、新たに生まれた発電量の4分の3が再生可能エネルギーだった。これは世界各国で見られる流れだ。
――映画であなたは「これは民主主義の危機への戦いだ」と言っています。
米国では民主主義がハッキングされてきた。最近はロシアに、そのずっと前からロビイストたちに。彼らは国民のためではなく、自分たちの利益のために政治をねじ曲げてきた。
米国民の3分の2は、地球温暖化問題を解決したいと考えている。解決策があることも分かっている。だからこの戦いに、私たちは勝てると思っている。ネットやメディアを活用して、個人がアイデアを出し、事実を訴えていく。
――日本ではこの間に、福島で原発事故が起きました。多くの国民は原発をやめたいと考えていますが、どうすればよいでしょうか。
事故から時間がたったが、あらためて心からお悔やみを申し上げたい。多くの方々が亡くなり、いまだに被害は十分に回復されていない。大きな悲劇だ。しかし、多くの人が原発について考える機会ともなった。