沖縄県宮古島で進められている環境アセスメント抜きの自衛隊基地建設
2017年11月22日
与那国島、石垣島、宮古島、沖縄島、奄美大島など琉球弧の島々で、国の中期防衛整備計画に基づいて自衛隊配備計画が進められている。住民の生命・財産・人権、平和的生存権の観点、さらには自治の侵害や地場産業の衰退、環境汚染などさまざまな観点から、島々で反対運動が起きている。
日本の環境民主主義の現状は、環境に関する国際的な条約「環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司法へのアクセスに関する条約」(オーフス条約)に比べて、四半世紀も遅れていると言われている。時代遅れの日本のアセス法で、島の環境が守れるのか。問題が浮き彫りになっている宮古島の例を見てみる。
5万人弱の人々が暮らす宮古島は、隆起サンゴ礁からなる面積約160平方キロの平らな島だ。川がなく、人々は飲み水を全面的に地下水に頼っている。防衛省は2015年5月、宮古島の大福牧場一帯と千代田カントリークラブ一帯の2ヵ所に地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊、警備部隊の約700~800人を駐屯させると計画した。だが大福牧場は地下水への影響が懸念されることから、千代田カントリークラブに絞る形に変更されて、事業が進んでいる。
大規模な事業であれば国のアセス法が環境アセスを義務づけているし、アセス法の対象とならない事業については自治体が条例で環境アセスを義務づけている。沖縄県アセス条例では、条例アセスの対象事業として20の「事業の種類」を列挙しているが、その中に「軍事基地」はない。条例では「ゴルフ場」や「スポーツ・レクレーション施設」の建設ならば20ha以上で条例アセスの対象事業になるから、21.5haの千代田カントリークラブを「公園」にするならアセス対象となる。ところが明らかに環境にとって負担となる「軍事基地」にする際は、アセス対象とならない。
そこで宮古島市の市民有志は、米軍と自衛隊による軍事基地建設をアセス対象とするようにと、2017年6月の沖縄県議会に陳情した。沖縄県には国内の米軍専用施設の70.4%が集中し、今また自衛隊の集中的配備計画が進められている。大規模な製造業がなく軍事基地こそが最大の環境汚染源である沖縄県で、アセス対象事業に「軍事基地」が含まれていないのは重大な欠陥と言わねばならない。
そこで宮古島市民らは9月県議会に第2弾の陳情をした。県アセス条例は20の対象事業に加え、21項として「1の項から20の項までに掲げるもののほか、環境に影響を及ぼすおそれがある土地の形状の変更、工作物の新設等の事業で規則で定めるもの」と記している。そこで、6月議会にも陳情したように「軍事基地」を新たなアセス対象事業に加えるか、あるいはこの21項を適用した施行規則を定めるかして、環境アセスを求めるべきだと主張したのである。しかし陳情に対して県の担当課が示した方針は、前の6月議会と変わらなかった。
宮古島と石垣島における陸上自衛隊のミサイル新基地建設をめぐっては、沖縄県が防衛省にアセス実施を求めている。しかしそれは、アセス法やアセス条例に基づくものではなく、自主アセスである。自主アセスが本来の意味でのアセスでないことは、
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