財政、税金、市民生活の日独比較【その2】
2018年01月10日
日本のような「自己責任社会」とは異なる政策のドイツは自立した国民が高い税を納め人生を豊かに暮らしている。実は、2年4カ月前、ドイツに移住してすぐ税金について考えさせられた。来る前に額面の月額給料を聞いていて「こんなもんか」と受け止めていた。しかし、最初の給料をもらい調べると、税金などで多額を引かれている。所長に「こんな給料では生活できない」と訴えた。「では調べてみよう」と言ってくれたが、結局、正しい受取額であった。
同じ事は消費税についても成り立つ。ドイツは19%だ。ドイツは内税だから余り気にならないが、以前、ノルウェーに旅行した時、レストランで請求書を見て驚いたことがある。料金の25%が付加されていた。消費税もやはり欧州は高い。
しかし、住んでみて分かったことがある。私が住むドレスデンは物価が安く、自宅で料理して生活する分には、家賃を入れても給料の半分もあれば充分である。スーパーで大きな買い物カゴを押しながらあれもこれもと山ほど選んでレジに進んでも、合計が1万円を超えない。日本だと、手提げのカゴに2杯も買うと1万円は平気で超える。基本的な食料品の単価が安い。だから、生活にお金はそんなに要らない。(1ユーロ=130円で換算)
大学生が1カ月に必要な生活費の平均は約10万円と聞いて驚いた。授業料は無料、住まいはシェアハウス、大学の食堂では食事代が教員の半額である。大学を出るまで、国が若者を税金で支援してくれる。次世代の人材育成こそ国家の最優先事項である。
ドイツでは共稼ぎが当たり前で、また、女性が働きやすい職場環境や保育制度が整っている。だから、二人で働いてベンツに乗り、地球の裏側で休暇を楽しむ贅沢な生活ができる。そして仕事に関する考え方も違う。仕事は生活の資金を得るために行うのであり、会社など組織のためではない。個人が全ての基本だから、契約以上の仕事が舞い込むことはない。
加えて、日本人のように美食家でないドイツ人の食事は、栄養さえあれば良いというメニューが多い。まずくはないし量がある。スーパーには、寿司や刺身のような高額な品は置いていない。肉は1キロが500円程度からあり、ビールも500mlが30〜100円程度。友人の日本人が大きなスーパーのワインを飲み比べたら。ボトル1本が300円の白が一番おいしかったそうだ。
家賃も日本に比べるとまだ安い。ただし、現在は人口が増えつつあり、住宅価格は年5%程度で上昇しているそうだ。州政府は若者の持ち家を支援しており、低金利のローンがあると聞いた。しかし、旧東独で人気があるのはドレスデンとライプチヒ、イエナ程度で、他の都市は人口が減りつつある。ドイツでも少子高齢化は大きな問題である。
服装も至ってカジュアル。男性は年齢構わずジーパンがほとんど。女性も年配者を含めてジーパンが5割を超える。若い女性もラフな服装で、日本のように着飾った女性は見かけない。若い女性の大半は夏にレギンス(黒タイツズボン)をはいている。スタイルが良いので似合う。スカートの女性など見たことがない。衣・食ともにいたって質実剛健。家も借家が多いそうだ。「人の目を気にしない」文化だ。以前書いた「自立性こそ教育理念」の国である。
支払う税金には、私が住むザクセン州の税金とドイツ政府の連邦税がある。消費税は19%だが食料品などは7%である。面白いことに、ハンバーガー店で「持ち帰り」で買うと7%だが、店で食べると19%。判断は灰色だが、概して細かいことをドイツでは問題にしない。
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