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日本も参加する木星探査で生命の起源がわかる?

新発見の地球型惑星つき恒星系は、木星系とそっくりだった!

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 太陽ではない恒星を回る惑星(太陽系外惑星)が20余年前に発見されて以来、系外惑星が発見される数はうなぎ上りだ。数だけでなく、種類も飛躍的に増え、「地球に近い」惑星も続々と見つかっている。そして、そうした事実が、新しい観測手段の開発や、新しい人工衛星観測計画を後押しするという好循環を生んでおり、まさに「新興分野」と言えるだろう。

 そんな新発見の続く系外惑星で、2017年に最も注目を浴びたのは、地球型惑星が7個も(つい先日のニュースによると、8個目も)見つかったという「TRAPPIST-1」恒星系だろう。7個のうち5個はサイズも地球並みだという。これには、若干専門から外れる私も興味をひかれた。その理由は、単に地球型なら生命がいるかも知れないというだけではない。後述するように、もしかしたら太陽系探査と本質的に重大な関連がありそうな予感がしたからだ。

中心星だけでなく、全体が木星系に似ている

 中心星「TRAPPIST-1」は地球から約40光年の距離にある赤色矮星である。暗くて小さくて軽い星で、ぎりぎり恒星になれた星だ。観測データによると、質量は太陽の8%しかない。これは、これ以上軽かったら核融合反応が始まらない(光を出すこともない)という限界値で、体積に至っては木星並みしかない。とはいえ、木星の質量は太陽の0.1%程度なので、太陽(恒星)と木星(巨大惑星)の中間的な存在といえるだろう。

 では、中心星と惑星(木星の場合は衛星)を含めた「系」全体はどうか?

 まず木星系のほうだが、最も内側を回る4つの衛星(内側からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)は、ガリレオが発見したことから「ガリレオ衛星」と呼ばれ、他の衛星群とは別に扱われることが多い。というのも、これらはガリレオ時代の望遠鏡ですら確認できたほど大きく、形も球形で他の衛星群と明らかに異なっているからだ。

 そして、これらガリレオ衛星の「配置」、すなわち中心星と、その回りをまわる衛星との距離が、実はTRAPPIST-1系の惑星群は配置と類似しているのである。それは図に示すように太陽系での惑星の配置の比ではない。

RAPPIST-1系(中)と太陽系(下)、木星のガリレオ衛星(上)の軌道 (C)NASA/JPL-Caltech
  TRAPPIST-1系では、中心星から第1惑星(一番内側を公転する惑星)までの距離が約170万kmである。太陽から水星までの距離(約5800万km)の30分の1以下しかなく、一番遠い第7惑星ですら900万km足らずで太陽-水星間の距離の6分の1以下しかない。一方、木星系と比べると、第1惑星までの距離は、第1衛星イオまでの距離(42万km)の4倍程度であり、第4衛星「カリスト」までの距離(188万km)に近い。

 地球との比較という意味で第3惑星同士を比較すると、太陽-地球の距離の約1億5000万kmに対し、TRAPPIST-1から第3惑星までの距離は約320万kmで50倍近い差がある。一方、木星からエウロパ・ガニメデまでの距離と比較すると、それぞれ約5倍、約3倍と、大差はない。こうしてみると、TRAPPIST-1系が実は太陽系より木星系に近いことが分かる。

 次に惑星の中身の面から比較してみよう。ガリレオ衛星は質量こそ地球の1-2%程度しかないものの、中心星との質量比でいえば、木星系もTRAPPIST-1系もほぼ同じになり、太陽と地球型惑星の比率より遥かに大きい。各惑星の比重から推定される組成も水や岩石に覆われていると考えられており、ガリレオ衛星に近い。

焦点の「液体の水の有無」を推定するには

 生命が発生しうるかどうかのカギを握る一つのポイントは、液体の水が存在するかどうかだ。木星の場合、氷の下に液体の水があると考えられているが、TRAPPIST-1の惑星はどうだろうか。

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