「他人事」ととらえる大学人が多い現状を打破すべし
2018年01月22日
日本学術会議は2017年3月24日、「軍事的安全保障研究に関する声明」(以下、2017年声明)を発出し、「戦争を目的とする科学研究は絶対に行わない」とした1950年、1967年声明の継承を明言した。その半年余り後の10月2日、新会長に選出された山極寿一・京都大学総長は議論を続けると語り、12月22日のメディア懇談会では各大学の対応についてアンケートを実施すると話した。2017年声明に学術会議副会長としてかかわった立場から、発出までの経緯を振り返り、これからの議論で大切なことは何かを考えてみたい。
検討委員会の委員として全ての会合に出席した私は、歴史研究者としてのサガだろう、草創期学術会議の総会速記録を読み込み、2つの声明採択への動きを時系列で見直した。そして、最初の1950年声明が、核兵器の恐怖を最もよく知る物理学者らを中心としたグローバルな平和運動を受け、日本の大学人・知識人らが市民レベルの運動とも連動することによって、冷戦体制へと突き進む世界情勢のなか、実に際どいタイミングで可決されたことを確認した。言い換えれば、かつての学術会議声明は「時代の世論」に支えられていたのである。
「戦争を目的とする研究は行わない」という過去の二つの声明の継承を宣言した2017年声明は、政府による研究者への介入が強まることへの懸念を表明し、大学等の各研究機関に対して研究の適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきだと提言している。学協会等にガイドライン等を設定してほしいという要望も入れている。
この声明は、軍学共同の実態を見直し、軍事研究に一定の歯止めをかけたと評価・歓迎される一方で、イノベーションにつながる科学・技術研究の進展を阻害するとして批判も浴びた。
もっとも、こうした賛否両論は、個々人の経験や専門分野と関わって、検討委員会内部にも学術会議会員の間にも存在する。とりわけ、
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