プロジェクト活動報告書から知る反響の大きさ、地道な国際貢献の意義
2018年02月16日
ドミニカ共和国の数学教育支援プロジェクトの活動報告書を、東京理科大理数教育研究センターの秋山仁教授と山口康之さんがいち早く昨年末に刊行した。現地の興奮ぶりは秋山さんご自身が書いたWEBRONZA記事からも伝わってくるが、このプロジェクトは日本の国際貢献のケーススタディとしても大変興味深く、報告書をもとに第三者の立場からリポートしてみたい。
一方、ドミニカ共和国の首都サントドミンゴは、新大陸で最初に建設されたスペインによる植民都市で、ここがスペインの米大陸への侵略拠点となった。だから、独立したあともドミニカ共和国の公用語はスペイン語である。島の西側はやがてフランスの植民地となり、1804年にフランスから独立して世界初の黒人による共和制国家ハイチが誕生する。ハイチの公用語はハイチ語とフランス語だ。ハイチ誕生後もイスパニョーラ島ではさまざまな勢力が入り乱れての戦争が続き、ドミニカ共和国の政情はなかなか安定しなかった。
教育の状況は、ウィキペディアによると「6歳から13歳までの7年間の初等教育が無償の義務教育である。全体的に、教育レベルは低い。子供がいる家庭に、日本のように勉強机や本棚がある家庭は珍しい」とのことである。ちなみに、外務省のサイトにあるドミニカ共和国のページには教育の記述はない。
なお、カリブ海を囲む国々でつくる「カリブ諸国連合」に加盟している国は25カ国ある。東南アジア諸国連合(アセアン)に加盟しているのは10カ国に過ぎない。「カリブ諸国の皆さん、これまで一まとめに考えていて大変失礼しました」と言いたくなるような数の多さ、そして多様さである。
今回のプロジェクトのキーパーソンは、秋山さんの記事にもあるように、牧内博幸さんだ。2016年9月にドミニカ共和国に日本大使として赴任し、10月にはダニーロ・メディーナ大統領と数学と科学の重要性について意見交換をした。その数カ月後には、副大統領と数学博物館の開設について議論、高等教育科学技術省の協力態勢もできて日本政府のイニシアティブによる数学博物館創設プロジェクトが始まった。
牧内さんは
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