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ニュージーランドが宇宙ロケット成功国に仲間入り

「3Dプリンターでエンジン製造」「9個の小型を同時使用」には仰天した

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

 ニュージーランドの民間宇宙開発会社ロケットラボが、3度目の正直で人工衛星の打ち上げに成功した。長さ17m、最大積載量225kgの新型2段ロケット「エレクトロン」2号機が1月21日、所定の軌道に衛星3機を投入した。これでニュージーランドは、13番目の「宇宙クラブ」(人工衛星を打ち上げる能力を持つ国家群)のメンバーとなった。ちなみに日本は4番目のメンバーだ。世界に名だたる平和国家で、かつ人口わずか480万人という小国ニュージーランドの成功は、近年の(科学探査以外の)宇宙ニュースのなかではとりわけ気持ちの良いニュースだった。

平和への貢献

拡大打ち上げに成功したロケットラボ社の「エレクトロン」ロケット(同社提供)

 人口が480万人というのは、北海道や北欧のデンマーク・ノルーウェー・フィンランドとほぼ同じでありスウェーデンの半分ということだ。そんな国でも人工衛星を打ち上げられるだけのロケットを作れるということは、大抵の国で作れることを意味する。もちろん、北朝鮮のようにそれを軍事・威嚇のために使われるのはまっぴらだが、ニュージーランドのような平和国家の民間企業がまさにビジネス目的で開発するのは大歓迎だ。

 そういう使い方が普通になり、どんな国でもロケットを打ち上げられる時代になれば、ロケットに対する極端な危機感も和らぐだろう。凶器という意味では隕石レベルの怖さしかないロケット残骸より、走る凶器トラックによるテロの方が遥かに怖いのであり、 北朝鮮ロケットを奇禍として 軍事緊張があおられ、結果的に専守防衛を超えた軍拡を容認したりする「アレルギー反応」も減るだろう。

奇想天外な二つの技術

 さて、今回の打ち上げ成功では、技術面で二つの点で「やられた」と思った。一つはロケットエンジンを9個に分割したことだ。

 今までの常識では、今回使った大きさのロケットの1段目・2段目は、1個の巨大なエンジン(ノズルが1個)だけを使うというものだった。H2Aのような大型ロケットすらメインエンジンの回りに補助ブースターをつける方式だった。というのも、エンジンは高温高圧になるもので、複数のエンジンを同時に制御するのが困難だからだ。しかし、このやり方だと、巨大なエンジンが熱や噴射圧でバラバラにならないように強度を維持するのが大変で、結果的に高価になってしまう。それを解決したのが、1段当たり9個のエンジン(ラザフォード・エンジン)を同時に使うというものだ。

拡大打ち上げを待つ「エレクトロン」

 考えてみればスプートニク以来60年の歴史の間に、半導体チップなど制御技術は大きく上がった。それに対して、エンジン本体の基礎技術は今も昔もそれほど変わらない。となれば、制御のより易しい小さなエンジンを沢山使って必要なパワーを得るという発想にたどり着くのは当たり前だ。本来ならそういう「軽量化」は日本の十八番の筈で、それこそホンダあたりが手がけてもおかしくない話だが、そういう開発を私は聞かない。結果的にニュージーランドに先を越された。

 もう一つは、エンジンの分割・小型化によって、3Dプリンターでロケットエンジンを製造できるようになった点だ。 ・・・ログインして読む
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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

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