トランプ政権の核兵器政策と、北朝鮮ミサイル実験、そして核兵器禁止条約
2018年02月08日
米科学雑誌「ブレティン・オブ・アトミック・サイエンティスト」は、2018年1月25日、最新の「終末時計」を発表した。午前零時の地球の滅亡まで、残された時間がどれだけあるかを示す概念時計だ。2017年に「2分半」の残り時間を示していた針は、30秒早められて「2分」となった。これは、米ソ冷戦のピークであった1953年以来の短い残り時間である。
はたして、何が最も深刻な要因なのか? それを防ぐために我々は何ができるのか? 最近報じられた米国のあらたな「核態勢見直し」や、ノーベル平和賞受賞団体「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が来日した際の発言なども踏まえて、この終末時計の意味を考えてみたい。
終末時計を発表している「ブレティン・オブ・アトミック・サイエンティスト」は1945年、米国の「マンハッタン計画」に参加して核兵器を開発していた科学者によって、シカゴ大学にて設立された。その目的は、核兵器のもたらす脅威を一般市民に分かりやすく説明することにあった。人類と地球を滅ぼしかねない核兵器の脅威をわかりやすく社会に伝えるため、終末時計が考案され、1947年に初めて発表された時は「7分前」であった。その後、この針を動かすのは、科学者を中心とする「科学・安全保障に関する委員会」が毎年、議論して決めてきた。
「意図的であれ、誤判断によるものであれ、核兵器が使用されるかもしれないリスクが、昨年は世界全体で高くなった」(終末時計解説「受け入れがたい核の脅威」より)
今回の終末時計で強調されているのが、この「核使用」のリスクである。
まず挙げられているのが北朝鮮である。この1年間で、北朝鮮は単なる「核爆弾」から、長距離ミサイルにも搭載可能な核弾頭の小型化、さらには大陸弾道ミサイルの開発を進めてきた。これに対し、米国とその同盟国である日韓は、共同軍事演習拡大など軍事的圧力を高め、核兵器使用を含むすべてのオプションを堅持することを明らかにした。さらに、ロシアとの関係悪化や中国核戦力の強化、インド・パキスタンの核戦力増強など、核兵器をめぐる環境は改善されるどころか、さらに悪化している、という判断だ。
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