教育を少しずつでも現代化する意義は大きい
2018年03月16日
引き続き、2018年2月14日に公示された高等学校学習指導要領の改訂案のおもしろさを探る。
前稿で述べたように、2016年12月の中教審答申は、統計的内容はもっとやれ、しかも情報科を巻き込め、という内容であった。その「情報」も、今回大きく改訂されることになった。
「情報」は前々回(2003年度から年次進行で実施)にできた新教科である。「教科」を名乗るには一般に複数の「科目」がなければならないので、「情報A」「情報B」「情報C」という科目から学校ごとに選べるようにした。しかし、これでは大学入試に出しにくい。
現行学習指導要領(2013年度から年次進行で実施)では、3科目から2科目に整理され、「社会と情報」「情報の科学」から学校ごとに選ぶようになったが、依然として全員が同じことを学ぶわけではなかった。
これが、今回の改訂案で、必履修の「情報I」と、そうでない「情報II」の2本立てになった。必履修科目が1本化されることは、情報教育関係者の悲願で、ようやくこれで大学入試に出しやすくなった。
センター試験に「情報関係基礎」というのはある。しかし、この内容はここでいう教科「情報」ではなく、主に工業・商業高校生をターゲットとしたもので、毎年500~600人程度しか受験しない。情報処理学会では、センター試験に代わる新テスト(「大学入学共通テスト」)で「情報」を出題するよう提言している。
統計に関しては、もともと「情報」では表計算ソフトを用いた簡単なデータ分析が多くの教科書で取り上げられていたが、今回の改訂案では、「情報I」の内容の一つとして「データを収集、整理、分析する方法について理解し技能を身に付ける」と記された。さらに「情報II」では、単元の一つが「情報とデータサイエンス」となっている。
「データサイエンス」とは、データについての科学である。有名なコンピューター科学者ピーター・ナウアが1960年に使ったのが最初らしいが、コンピューターを駆使した今風の統計学を指す言葉でもある。この言葉が「情報」の単元の一つに現れたことは、統計教育推進派にとって画期的な出来事といえる。「情報II」は、必履修科目でも受験科目でもないため、多くの高校で開設されない可能性があるが、たとえ「情報I」だけでも数学の「データの分析」を補うことはできる。
つまり、「数学」と「情報」が「データ」で結びつくという筋書きである。
もう一つ、今回の改訂の目玉が、新教科「理数」である。「数学又は理科の教師が指導を行う」とされており、新たな教員を採用するわけではない。必履修ではないが、必履修の「総合的な探求の時間」(現「総合的な学習の時間」)の一部または全部を「理数」で置き換えることができる。また、現センター試験を置き換える大学入学共通テスト(新テスト)についての高大接続システム改革会議「最終報告」は、この科目を「出題する」と明言している(この「最終報告」では「数理探究(仮称)」と書かれている)。
この教科では、既存の知識を学ぶというよりは、テーマを決めて実験・観察し、データを分析し、成果を発表するといったミニ研究が行われる。「データの分析」の活躍の場であるが、どの高校でも開設されるわけではなく、ここで「データの分析」を系統的に教えるのは難しそうである。
なぜ「データの分析」や「データサイエンス」を小・中・高校で学ぶのか。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください