高線量下での作業、フル遠隔操作を想定して準備が進んでいる
2018年05月29日
福島第一原発の現況を知っておこうと、先週、朝日新聞科学医療部の同僚たちとの現地視察に参加した。2011年3月の事故から7年余りを経たが、私が原発構内に入るのは初めてだった。事故に関するこれまでの経緯については、朝日新聞紙上に数多くの記事が掲載されてきたので、それらの記事を参考にしてほしい(事故から7年の記事の一つはこちら)。視察の際、東京電力の広報担当者から現地で説明を受けた内容の中で、個人的には、今年度の中頃にも着手される予定となっている3号機の燃料プールからの使用済み核燃料等の取り出しに関心を持った。ここではまず、そのことを取り上げてみたい。
原発の燃料プールとは、原子炉建屋の最上階に設けられた巨大な水槽だ。使用済み核燃料を冷やしながら一時保管したり、装塡間近の新燃料を保管したりするために使われる。プールの水は、核燃料が出す放射線を遮蔽し、生じてくる熱を冷却する上で重要な役目を果たす。平時の見学なら、プールの上から水の中に沈められた使用済み核燃料をのぞき見ることもできる。原子炉格納容器上部の操作口とは同一のフロアにあり、核燃料は設置されている燃料交換機などによって、原子炉とプールの間を運ばれる。
福島第一原発の事故では、水素爆発を起こした3号機から配管を通して水素が流れ込んだ4号機の原子炉建屋も爆発したとされる。当時4号機は定期検査中で、原子炉にあった核燃料もプールに移されていた。このため、大きな破壊を受けて機能不全になった1~4号機のプールの中では発熱量が最も高く、4号機の燃料プールの水が干上がってしまうのではないかという指摘が米政府等から出された。もし燃料を冷やし続けられないと、やがて燃料が溶け崩れて新たな放射性物質の拡散を引き起こしてしまう。世界中を不安に陥れ、放水等の緊急の冷却対応やプールの状況の確認が大きな問題となった。炉心溶融を起こしていた1~3号機の危機的な状態も含め、あの時の緊張感は決して忘れることはできない。
一方、燃料プールからの使用済み核燃料取り出しが迫る3号機は、原子炉が炉心溶融を起こしたため、最上階のフロアも事故後は毎時最大2シーベルト(数時間いれば致死的な影響を受けるレベル)の高線量に曝されており、人が近づける場所ではなかった。このため
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