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取り出し迫る3号機の使用済み核燃料

高線量下での作業、フル遠隔操作を想定して準備が進んでいる

米山正寛 朝日新聞DO科学編集長

 福島第一原発の現況を知っておこうと、先週、朝日新聞科学医療部の同僚たちとの現地視察に参加した。2011年3月の事故から7年余りを経たが、私が原発構内に入るのは初めてだった。事故に関するこれまでの経緯については、朝日新聞紙上に数多くの記事が掲載されてきたので、それらの記事を参考にしてほしい(事故から7年の記事の一つはこちら)。視察の際、東京電力の広報担当者から現地で説明を受けた内容の中で、個人的には、今年度の中頃にも着手される予定となっている3号機の燃料プールからの使用済み核燃料等の取り出しに関心を持った。ここではまず、そのことを取り上げてみたい。

福島第一原発3号機の建屋を間近に見られる通路は除染が進み、この5月から一般の服装(防塵マスクやヘルメットは着用)で立ち入られるGゾーンとなった。私たちは、出かけて行ったシャツやズボンを身につけたまま、この通路で3号機に関する説明を受けた=5月24日、松村北斗撮影拡大福島第一原発3号機の建屋を間近に見られる通路は除染が進み、この5月から一般の服装(防塵マスクやヘルメットは着用)で立ち入られるGゾーンとなった。私たちは、出かけて行ったシャツやズボンを身につけたまま、この通路で3号機に関する説明を受けた=5月24日、松村北斗撮影

 原発の燃料プールとは、原子炉建屋の最上階に設けられた巨大な水槽だ。使用済み核燃料を冷やしながら一時保管したり、装塡間近の新燃料を保管したりするために使われる。プールの水は、核燃料が出す放射線を遮蔽し、生じてくる熱を冷却する上で重要な役目を果たす。平時の見学なら、プールの上から水の中に沈められた使用済み核燃料をのぞき見ることもできる。原子炉格納容器上部の操作口とは同一のフロアにあり、核燃料は設置されている燃料交換機などによって、原子炉とプールの間を運ばれる。

世界を不安に陥れた4号機の燃料プール

 福島第一原発の事故では、水素爆発を起こした3号機から配管を通して水素が流れ込んだ4号機の原子炉建屋も爆発したとされる。当時4号機は定期検査中で、原子炉にあった核燃料もプールに移されていた。このため、大きな破壊を受けて機能不全になった1~4号機のプールの中では発熱量が最も高く、4号機の燃料プールの水が干上がってしまうのではないかという指摘が米政府等から出された。もし燃料を冷やし続けられないと、やがて燃料が溶け崩れて新たな放射性物質の拡散を引き起こしてしまう。世界中を不安に陥れ、放水等の緊急の冷却対応やプールの状況の確認が大きな問題となった。炉心溶融を起こしていた1~3号機の危機的な状態も含め、あの時の緊張感は決して忘れることはできない。

使用済み核燃料の取り出しを控えて、上部にかまぼこ形のカバーが設置された福島第一原発3号機の原子炉建屋。右奥には4号機上部の白いカバーも見える=5月24日、松村北斗撮影拡大使用済み核燃料の取り出しを控えて、上部にかまぼこ形のカバーが設置された福島第一原発3号機の原子炉建屋。右奥には4号機上部の白いカバーも見える=5月24日、松村北斗撮影
 幸いに4号機の燃料プールは水の喪失を免れ、使用済み核燃料を冷やし続けることに成功した。とはいえ、爆発で不安定になった建屋の上にいつまでも核燃料を置いておくわけにはいかない。そのため吹き飛んだ屋根の代わりに鉄骨で組んだカバーをかけ、新たにクレーン等も設置された。がれきの撤去などによる放射線量の低減も徹底して実施され、最上階のフロアの線量は毎時数十マイクロシーベルトとなって、人が一定の作業をする環境も整えられた。そして2013年11月から1年余りをかけて核燃料の取り出しが進められ、2014年12月に1535体の取り出しが完了した。取り出された使用済み核燃料は現在、原発構内の別の場所にある共有プールに移されて保管されている。

取り出しは1日1体のペースで2年を要する

 一方、燃料プールからの使用済み核燃料取り出しが迫る3号機は、原子炉が炉心溶融を起こしたため、最上階のフロアも事故後は毎時最大2シーベルト(数時間いれば致死的な影響を受けるレベル)の高線量に曝されており、人が近づける場所ではなかった。このため ・・・ログインして読む
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筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) 朝日新聞DO科学編集長

朝日新聞科学医療部記者兼DO科学編集長。朝日新聞の科学記者を経て公益財団法人森林文化協会へ出向し、事務局長補佐兼「グリーン・パワー」編集長を務めた。2018年4月から現職。ナチュラリストを夢見ながら、とくに自然史科学と農林水産技術に関心を寄せて取材活動を続けている。

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