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観光客の制限を求められた奄美・沖縄

世界自然遺産「登録延期」で試される「観光立国日本」の立ち位置

杉本崇 朝日新聞科学医療部記者

西表島。下は新城島=2018年4月20日、本社機から、堀英治撮影
 ユネスコの世界自然遺産への登録を目指してきた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(鹿児島、沖縄両県)が、ユネスコの諮問機関の国際自然保護連合(IUCN)から「登録延期」を勧告され、環境省はいったん申請を取り下げる方針を5月29日に決めた。申請書を修正したうえで再提出を目指す。

 当初、登録延期に対し、環境省からは「想定外」という声も上がった。しかし、IUCNの勧告を読むと、とてもよく納得できる内容だった。とくに観光について、観光客の数をコントロールできるような計画を早く立てるように日本政府に促している。世界から旅行者を呼び込もうと「観光立国」を掲げる日本は、できるだけ早く対応する必要がある。

 世界自然遺産の登録延期の経緯については、松田裕之横浜国立大学教授がWEBRONZA記事で解説しているが、今後とるべき自然保護策という視点で、あらためてIUCNの報告書を読み直した。IUCNの報告書は、ユネスコのホームページから読むことができる。

 IUCNの調査報告書では、最大の脅威として「生物多様性を脅かすノネコなどの外来種」や「絶滅危惧種の交通事故」、「野生種の違法採取」、「観光の影響」を挙げていた。特に注目したのは、具体的な地名を入れて指摘している記載だ。「観光客による環境の攪乱は、西表島については重大な現在の脅威である」。

西表島の観光客数(沖縄県竹富町統計から)

 実際に統計データを調べてみると、沖縄県竹富町の西表島には、相当な数の観光客が来ている。竹富町によると、1990年には西表島を訪れた観光客は12万人だったが、どんどん増えて2007年には40万人を超えた。その後、いったん減ったが、新石垣空港が2013年に開港し、空港から1時間強で西表島に行けるようになると、30万人台まで再び増えた。

 観光客が増えたことで、絶滅危惧種イリオモテヤマネコの交通事故死が増えた。2000年ごろまでは年1、2件だったがここ数年は倍増し、2016年は最多の7件を記録した。島でイリオモテヤマネコの保護に携わるNPO法人「トラ・ゾウ保護基金」の高山雄介さんは「ヤマネコが車や人の存在に慣れ、道路上でひかれた別の動物を食べたり、道路近くで餌をとったりすることが増えていると指摘されている」と話す。ほかにも西表島の奥まで入る観光客が増え、希少な植物の生息地が踏み荒らされる危険も増している。

 IUCNは西表島について「近年、(観光客の)劇的な増加のため、地域住民や関係機関が懸念を抱えている」とも報告している。

人が訪れない密林の奥には岩を覆うこけがそのまま残り美しい景色を作り出していた=2018年4月27日、沖縄県竹富町の西表島、小宮路勝撮影

 沖縄県が昨年9~11月に島民にアンケートしたところ、

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