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打開策の見つからない汚染水対策

凍土壁の効果は限定的、地下水が豊富な原発敷地に増え続ける貯蔵タンク群

米山正寛 朝日新聞DO科学編集長

 東京電力・福島第一原発の構内を少し高い位置から一望すると、事故を起こした原子炉建屋にもまして、林立するタンク群が目につく。汚染水を貯蔵するこれらのタンクが今なお増え続けている状況を考えると、溶けた核燃料や使用済み核燃料の処理に加えて、放射性物質を含んだ汚染水も対応を急がねばならない喫緊の課題であることが伝わってくる。

拡大福島第一原発構内に林立するタンク群。奥に事故を起こした1~4号機が見える=5月24日、松村北斗撮影

冷却水と地下水が混じり合い汚染水に

拡大福島第一原発で実施されている主な汚染水対策。フェーシングは構内各所に施工されている
 炉心溶融を起こした1~3号機の原子炉には、今も崩壊熱を取り除くために冷却用の水が注がれている。事故当初、冷却水は垂れ流し状態で、それが放射性物質を含んだ汚染水となって原子炉建屋にたまり、外部へと漏れ出しもした。これを回収して浄化するために、現在はセシウム吸着装置や多核種除去設備などの処理施設が整備されて稼働している。処理を終えた水は、トリチウム(三重水素)以外のほとんどの放射性物質を取り除かれた状態でタンクに貯蔵されている。浄化された水の一部は、再び冷却に使うという循環利用もなされている。一方で、浄化処理に伴い、取り除かれた多くの放射性物質を含む沈殿物や吸着剤は別にたまり続けている。

 こうした取り組みが進んだにもかかわらず、汚染水がなおも増え続けているのは、周囲からの地下水が建屋内に流れ込んで内部の汚染水と混じり合い、新たに放射性物質を含むようになってしまうからだ。海に面した福島第一原発の現地は、かつて高さ約30メートルの台地だった。その台地を半分ほど削って低くした場所へ建てられた原発は、好んで地下水に近づいていったようなもの。もともと地下水は豊富で、事故前から建屋への悪影響を抑えるために地下水のくみ上げをしていたほどなのだ。東電の説明によると、現在は新たな汚染水の発生を抑えるため、「凍土壁」のほか「サブドレン」や「地下水バイパス」「フェーシング」といった地下水対策がなされている。

 ここでの凍土壁とは、1~4号機の建屋を囲むように地下へ氷の壁を設けて地下水の流路を断ち、建屋への流入量を減らす対策だ。長さ30メートルほどの凍結管を1メートル間隔で地中に並べ立たせ、その中に零下30度の冷媒を流すことで地中の水分を凍らせて、連続した氷の壁をぐるりと築いていく。2014年6月に着工し、3年余りを経た昨年8月にようやく「完成」と呼べる状態に達したそうだ。

凍土壁の内外で観察できた地下水位の差

 私たちは今回、4号機建屋の近くで、凍土壁を挟んで外側と内側(建屋側)に設置された地下水位観察用の井戸を見学した。まず外側の井戸をのぞくと、2メートルほど下に水面が見えた。これはそこまで地下水位が達していることを意味する。ところが少し離れた内側の井戸をのぞくと、 ・・・ログインして読む
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筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) 朝日新聞DO科学編集長

朝日新聞科学医療部記者兼DO科学編集長。朝日新聞の科学記者を経て公益財団法人森林文化協会へ出向し、事務局長補佐兼「グリーン・パワー」編集長を務めた。2018年4月から現職。ナチュラリストを夢見ながら、とくに自然史科学と農林水産技術に関心を寄せて取材活動を続けている。

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