生物多様性を守るため、環境教育・エコツーリズムの拠点づくりに取り組んだ
2018年07月02日
アマゾンのど真ん中にあるブラジルの都市マナウスに、新世代型の動植物園・水族館とも言える「フィールドミュージアム」をつくろう!、というプロジェクトを4年ほど前から進めている。国際協力機構(JICA) と科学技術振興機構(JST)、京都大学が共同して進める地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「”フィールドミュージアム”構想によるアマゾンの生物多様性保全」プロジェクトだ。生物多様性の保全になぜフィールドミュージアムなのか? 我々がやってきたことを報告することで、ともに考えていただく材料にできればと思う。
アマゾンには世界最大の熱帯雨林があり、その広さは地球上の全熱帯雨林の約半分に相当する。熱帯雨林は、今では全陸地面積の6%しか残されていないが、そこには全生物種の半分以上が生息すると推定されている。アマゾンは地球最大の生物多様性ホットスポットなのだ。
中でもアマゾン川最大の支流であるリオ・ネグロ(黒い川)の合流点に位置する大都市マナウスの周辺には、とりわけ貴重で多様な熱帯林が広がっている。アンデス山脈からの栄養豊かな白い水とギアナ高地からの栄養の乏しい黒い水が合流する場所だからである。
その貴重な自然が、今、危機にさらされている。アマゾン最大の工業都市としてマナウスはここ10年で人口が倍増して200万人になるという急拡大を遂げ、それにより周辺の森や川が次々に失われているからだ。多くの動物や植物が絶滅の危機に瀕し、例えば、アマゾンの固有種である「アマゾンマナティー」は絶滅危惧種となり、ピンクのイルカとして知られる淡水イルカ「アマゾンカワイルカ」もナマズ漁の餌として乱獲されて絶滅が危ぶまれている。陸では、マナウス周辺の分断化された森だけに生息する小型のサル「フタイロタマリン」が絶滅危惧種だ。
これらの貴重な動物たちを守るためには、まず彼らの生態や行動を理解することが必要だ。しかし、アマゾン川の水は濁っており、水中での観察が不可能なため、水生生物の研究は進んでいなかった。また、アマゾンの樹木には意外にも細いものが多く、多くの生物が生息する森林上層部(林冠、キャノピー)を観察するための施設(木と木をつなぐ吊り橋など)を作るのが難しく、森林の研究も遅れていた。
そこで我々は、
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